海外取引がある会社が注意したい税務調査のポイントを解説

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海外取引がある会社が注意したい税務調査のポイントを解説

 ニュース等で耳にすることがある「税務調査」。特に近年、海外取引を行う企業(あるいは個人事業主)が顕著に増加していることから、海外取引を行う企業を対象とした税務調査の件数が増えているようです。税金に関する何らかの調査であることは、何となく想像がつくものの、どういう場合にどのような調査が行われるのか、その結果、どうなるのか、具体的な内容をご存じの方はそれほど多くないのではないでしょうか。そこで本コラムでは、海外取引がある会社が注意しておくべき税務調査のポイントなどについて解説します。
税務調査の概要や対処法を知りたいとお考えの方は必読です。

そもそも「税務調査」とは何か

 日本では昭和22年から、所得税、法人税、相続税、贈与税などの国税に対し、「申告納税制度」が採用されています。法人あるいは個人の納税者が、自ら税額を計算して申告・納付する納税方法です。“正しく申告されていること”を前提に成り立っている制度なので、税額の計算や申告内容には正確さが求められるのですが、意図しない計算ミスや、課税額を抑えるための虚偽申告などの可能性も否定できません。 それを是正するため、国税庁が管轄する税務署などが、正しく税務申告が行われているかどうかを調査・確認するために実施するのが「税務調査」です。税務調査には「強制調査」と「任意調査」があり、以下のような特徴があります。

<強制調査>
脱税の疑いがある納税者を対象に、国税局査察部が裁判所の令状を持って強制的に行う税務調査が「強制調査」です。「脱税額が1億円を超えると思われる」、「脱税の隠蔽工作が悪質」などの場合に実施され、納税者側に税務調査を拒否する権利はありません。

<任意調査>
脱税の疑いはないものの、税務調査を行うべき何らかの理由(後述)がある法人・個人が対象となる税務調査が「任意調査」です。強制捜査と違って突然訪問されることはなく、税務署から電話で訪問日時などの連絡が入ります。電話での事前通知が困難な場合には、通知書が届きます。

調査官(税務署の職員)には「質問検査権」が認められているため、正当な理由なく帳簿類の提示要求に応じない場合には罰則が設けられています。

 多くの企業や個人事業者が、何らかの節税対策に取り組んでいる昨今、税務調査を必要以上に心配する経理担当者もいるかもしれません。しかし、税務調査は申告内容の確認や不正行為の防止を目的に行われる調査なので、やみくもに調査されることはありません。 売上や利益の変動幅が大きい、過去に申告漏れなどの指摘を受けたことがある、申告内容に不審な点があるなど、何らかの理由がある場合に、税務調査の対象になりやすくなります。

海外取引における税務調査の基本

 国際流通ルートの拡大など経済のグローバル化が急速に進むのに伴い、海外取引を行う企業が増えています。近年はeコマース市場が急速に拡大していることから、ネットを利用した輸出・入事業に力を入れる法人も、さらに増えると予想されています。
 ただ、海外取引を行う際の源泉所得税や消費税の取扱いなどについて、課税されるべき取引を免税取引として集計するなどのミスが発生しやすいことから、税務調査の対象となるケースが増えているようです。

 国税庁がまとめた「令和2事務年度法人税等の調査事績の概要」によると、同庁は海外取引のある法人について、法人税と源泉所得税のいずれも申告漏れ額について把握していることを発表しており、源泉所得税に関しては令和2年実績で約14億円の追徴課税が実施されています。法人税の申告漏れも約1,530億円にのぼると見ており、同報告の「主要な取組」の2番目に「海外取引法人等に対する取組(法人税)」を掲げるほど、海外取引に対しては目を光らせています。

 この報告の中で国税庁は、「増加する輸出入取引や海外投資を行う法人については、課税上の問題点を幅広く把握し、厳正な調査を実施」と明言していますから、輸出・入取引や海外投資を行う企業は、税務面の様々な項目について検討しておく必要があります。特に、「タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)」や「移転価格税制」について、きちんと理解しないまま事業を行うと、同税制に関する事柄を税務調査で厳しく追及される可能性があるため、要注意です。

 現在は国際税務を担当する「国際税務専門官」が税務署や国税局に配置され、税務調査の対象が海外取引を行う法人の場合、管轄する税務署の調査官の支援部隊として国際税務専門官が同行することも多くなっています。海外取引を行う企業の経理担当者は、国際税務の基本的な仕組みを理解し、税務調査の対象となった場合もしっかり対応できるよう、必要な知識を身につけ準備を進めておく必要があります。

出典:国税庁「令和2事務年度 法人税等の調査事績の概要

税務調査でチェックされるポイントとは?

 前述したように、輸出・入取引や海外投資を行う企業の場合、本来は課税取引であるものを免税取引として集計したり、課税資産の譲渡そのものを見落とし、納めるべき消費税が過少に計算されていたりするケースが少なからず見られます。「資産の譲渡」は、商品や製品の販売ばかりでなく事業用設備の売却、特許権や商標権の譲渡、現物出資、負担付贈与、代物弁済なども含まれるため、事前に確認しておく必要があります。

 取引量や取引内容にもよりますが、海外のグループ会社との取引について、日本で計上すべき利益を海外移転していないか、国際的租税回避に該当する取引(海外への資産隠し、国ごとの税制の違いを利用した税負担軽減など)はないか、源泉徴収漏れがないかなどが、重点的に調査されることが多いからです。 海外取引のある法人に対する調査には、「日本の親会社に対する税務調査」と「海外子会社に対する税務調査」があり、事前に確認しておくべきポイントは、それぞれ以下の通りです。

<日本の親会社に対する税務調査>
海外への支払について漏れがないか、海外への手数料や使用料について源泉徴収漏れが生じていないかなどの点を確認しておく必要があります。 また、租税条約による源泉税の減免を受けるためには、事前に「租税条約に関する届出書」を税務署に提出しておかなければなりませんが、この提出が行われていないケースも多いので、必要な手続きについて、再度確認しておきましょう。

<海外子会社に対する税務調査>
海外の子会社に対する調査は、日本の税務当局の調査対象となる場合もあれば、子会社が立地する国の税務当局の調査対象となる場合もあり、主に法人税や消費税、売買取引や契約関係について調査が行われます。調査形式は国ごとに異なっており、会社で行う実地調査がほとんどなく、書面調査が中心となる国がある一方で、担当者が税務当局に呼び出される形式の調査を行う国もあります。

税務調査の対象となりやすいのは、海外子会社の損益変動が異様に大きかったり、数期にわたって赤字が続き、現地の同業他社と比較して不自然なほど利益が低かったりする場合等です。そうした状況を解消できるようであれば、解消しておく方が税務リスクの観点からは賢明ですし、何らかの事情により損益状況が改善できない場合も、合理的な説明ができるように事前の準備をしておくべきです。 なお、以下は国税庁のWebサイトからダウンロードできる令和3年4月から令和4年3月までの間に提供した法人税関連の申請書式です。例えば「国外関連者に関する明細書」には、国外関連者の基本情報(従業員数や株式の保有割合、収益または売上など)はもちろんのこと、国外関連者との取引状況については棚卸資産や役務提供の対価、無形資産の譲渡対価など細かい項目まで記入欄が設けられており、調査官が調査項目に当たりをつける際の資料となります。税務当局に指摘されないか、指摘される場合にはどのような追及を受けそうか、あらかじめ専門家の目による
チェックを受け、実際の調査に備えておくべきです。

<国外関連者に関する明細書>

<特定外国子会社等に係る課税対象金額又は個別課税対象金額の計算に関する明細書>

出典:国税庁「令和3年4月から令和4年3月の間に提供した法人税等各種別表関係(令和3年4月1日以後終了事業年度等又は連結事業年度等分)

税務調査への備えと対処法について

 隠ぺいや偽装工作など、調査の妨害が予想されるケースを除き、税務調査は通常、事前に税務署から調査日程について連絡があり、一般的に過去3期まで遡って調査が行われます。税務署から税務調査の連絡が入った場合、企業側はどのように対応すべきかをまとめました。

(1)すぐに顧問税理士に連絡する
  税務調査を行うとの連絡が入った場合、直ちに顧問税理士と連絡を取り、調査実施
  までに帳簿や資料を可能な限り整理しておきましょう。帳簿や資料を基に税理士と
  十分に相談し、申告内容が適正であることを合理的に説明できるよう備えておくべき
  です。顧問税理士がいない場合は信頼できる税理士を探して、しっかりしたサポート
  を依頼するようにしましょう。

(2)税務調査で提示を求められる帳簿類を準備する
   一般に税務調査では、過去3期まで遡って調査が行われます。海外取引や海外資産
   で必要となる法定調書は、国外送金等調書、国外証券移管等調書、国外財産調書、
   財産債務調書で、法定調書以外にも会社案内や組織図、役員名簿などの会社概要、
   議事録や稟議書、さらに海外取引がある場合は、海外関連会社の概要、財務諸表や
   申告書類、契約書類、海外送金依頼書などの提示を求められる可能性もあります。
  (1)の内容と重複しますが、調査実施までに可能な限り整理しておき、それら資料
   についてきちんと説明できるよう準備すると同時に、未処理のものがないかも確認
   しておくべきです。

(3)税理士のサポートを受けてリハーサルを行う
   日本の場合、税制や会計基準が目まぐるしく変化するため、適正な会計処理を
   行っているつもりでも問題が指摘されることがよくあります。そのため、税務調査
   の前には税理士のサポートを受けながら、リハーサルを行っておいた方が良いで
   しょう。 リハーサルを行うことで、調査当日に落ち着いて対応できるのに加え、
   会計処理のミスを見つけたり、帳簿類を再チェックしたりすることができると
   いったメリットもあります。

まとめ

 海外取引がある会社が注意すべき税務調査のポイントや対応策などについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか。

 紹介したように、日本の国税庁は今後、国際的な脱税及び租税回避行為に対処するため、輸出・入取引や海外投資を行う法人に対して、より厳正な調査を実施する姿勢を明らかにしています。(※出典:国税庁「適正・公平な課税・徴収」)該当する企業は、税務調査で追徴課税されるなどのリスクを回避するため、頻繁に改正される税制を注視すると同時に国際税務に精通した税理士のサポートを受けながら、税務調査対策を講じておくことが重要です。

 追徴課税されるなどのリスクを回避するため、頻繁に改正される税制を注視すると同時に国際税務に精通した税理士のサポートを受けながら、税務調査対策を講じておくことが重要です。 東京共同会計事務所では、タックスヘイブン対策税制や移転価格税制への対応に、豊富な実務経験を持つ専門チームが戦略的なコンサルティングサービスを提供しています。自社だけでは税務調査への対応が困難と感じられる場合は、東京共同会計事務所までお気軽にお問い合わせ下さい。

 なお、本稿の内容は監修者の個人的見解であり、当事務所の公式見解ではありません。記載内容の妥当性は法令等の改正により変化することがあります。本稿は具体的なアドバイスの提供を目的とするものではありません。個別事案の検討・推進に際しては、適切な専門家にご相談下さいますようお願い申し上げます。
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