英国政府は、2027年1月に予定されている英国の炭素国境調整措置(CBAM)の実施に向けて、関係法令整備を進めています。2025年4月24日、CBAMの第1次法案が公表され、2025年7月3日を期限としたパブリックコメントが行われています。
英国のCBAMは、対象産品(CBAM産品)の輸入者に対して、輸入産品の二酸化炭素(CO2)の埋込排出量に応じた新たな税を課す制度です。
本稿では、英国のCBAMの第1次法案の概要について説明します。
対象産品は、アルミ製品、セメント、肥料、水素、鉄鋼製品とされており、EUのCBAMとは異なり、電力は対象産品とされてはおりません。
EUのCBAMとは異なり、新たな税と位置付けられています。
課税額は、輸入産品の埋込排出量にCBAMレートを乗じた額から、輸出国等において炭素価格を負担している場合には、負担の対象となった輸入産品の埋込排出量に輸出国等の炭素価格を乗じた額を差し引いた額とされています。
なお、CBAMレートは、英国内の炭素価格を基に設定され、政府が四半期毎に公表することとされています。
埋込排出量の対象は、直接排出量及び間接排出量とされております。製造工程に投入された前駆体がある場合には、当該前駆体の埋込排出量も含むこととされています。
ただし、詳細については、別途規定することとされています。
なお、実データによる算出が難しい場合には、英国政府が決定するデフォルト値を用いることも可とされています。
また、実データにより算出された排出量については、検証を受けることが必要とされています。
CBAM産品の輸入者は、歳入関税庁(HMRC)への登録が必要となりますが、CBAM産品の直近12ヶ月の輸入額が5万ポンドを超えない輸入者については、登録が免除とされています。
納税の時期について、2027年輸入分は2028年5月末までに申告納税が必要とされ、2028年以降は、四半期ごとに、各四半期終了後2ヶ月以内に申告納税が必要とされています。
英国政府は、今回のパブリックコメントで出された意見を検討の上、今年後半にはCBAM法の施行を見込んでいるとしています。
なお、詳細な実施規則等についても、事前にパブリックコメントを行う予定としています。
上述は英国のCBAMをとりまく現状の概略をまとめたものとなっています。あくまでも途中経過の概要説明です。従って、実際に英国のCBAM対応を行う際には、最終的に法制化されたCBAM法や実施規則等を確認する必要があります。
(参考文献)
英国CBAMの第1次法案:https://www.gov.uk/government/consultations/draft-legislation-carbon-border-adjustment-mechanism
本稿の内容は執筆者の個人的見解であり、当事務所の公式見解ではありません。記載内容の妥当性は法令等の改正により変化することがあります。
本稿は具体的なアドバイスの提供を目的とするものではありません。
個別事案の検討・推進に際しては、適切な専門家にご相談下さいますようお願い申し上げます。
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