非居住者に対する源泉徴収
~税率・手続き・租税条約などを徹底解説~

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非居住者に対する源泉徴収<br>~税率・手続き・租税条約などを徹底解説~

 海外の個人や法人に対して企業が支払いを行う際、予め税金を差し引いてから支払う「源泉徴収」が必要か、悩む実務担当者も多いのではないでしょうか。

 非居住者または外国法人(以下、「非居住者等」)への支払いについては所得税法等に規定があり、企業は「その支払の際、所得税および復興特別所得税を源泉徴収し、納付する義務がある」とされています。

 ここでは、源泉徴収の対象となる国内源泉所得の種類と税率や、租税条約による減免制度、外国法人の日本支店等が適用できる免除制度、源泉徴収義務を負う企業が注意すべき実務上のポイント等について、詳しく解説します。

目次

非居住者等への支払いに源泉徴収は必要か?

 非居住者等への支払いには原則として源泉徴収が必要です。 ただし、すべての支払いが対象となるわけではなく、「国内源泉所得」に該当する特定の所得のみが源泉徴収の対象となります。
 非居住者等が日本国内で商品やサービスを販売・提供すると、その稼得した国内源泉所得に対して所得税・法人税が課されます。

 国内源泉所得は、所得税法上主に15種類に分類されており、うち「恒久的施設帰属所得」などを除いた13種類の所得に対して源泉徴収がなされます。(13種類の所得と税率については次章で詳述いたします。)

 源泉徴収を行うのは、非居住者等に支払いを行う者(以下、「支払者」)であり、通常は取引を行っている企業です。支払者はその支払の際、非居住者等から所得税および復興特別所得税を源泉徴収し、納付する義務を負います。

出典:国税庁「No.2885 非居住者等に対する源泉徴収のしくみ」

源泉徴収の対象となる国内源泉所得13種類と税率

 それでは、非居住者等に対して課される国内源泉所得のうち、源泉徴収の対象となる所得の種類は、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?また、賦課される税率はどの程度のものなのでしょうか?以下に、支払者の実務で取り扱うことが多い主要なものを紹介いたします。

所得の種類税率備考
任意組合等の利益分配20.42%
土地建物等の譲渡対価10.21%ただし、例外として「土地等の譲渡対価が1億円以下で、その土地等を自己またはその親族の居住の用に供するために譲り受けた個人から支払われるものについては、源泉徴収は不要」とされています。
国内における人的役務の提供対価20.42%
不動産等の賃料20.42%ただし、例外として「不動産等の賃貸料で、自己またはその親族の居住の用に供するために借り受けた個人から支払われるものについては、源泉徴収は不要」とされています。
預貯金・公社債等の利子15.315%
配当①上場株式等の配当等15.315%①の上場株式等から、発行済株式または出資の総数または総額の3パーセント以上に相当する数または金額の株式または出資を有する非居住者が支払を受ける上場株式等の配当等は除くとされています。

また、①の上場株式等には、公募証券投資信託(公社債投資信託および特定株式投資信託を除く)の受益権および特定投資法人の投資口も含まれるとされています。
②私募公社債等運用投資信託等の収益の分配15.315%
③上記①②以外の配当等20.42%
貸付金の利子20.42%
工業所有権、著作権等の使用料等20.42%
匿名組合分配金20.42%

 源泉徴収税額の計算は、原則的に国内源泉所得の支払金額に税率を乗じて算出されます。

 また、非居住者等に対する支払が外貨の場合には、原則的に支払期日における電信買相場で日本円に換算してから、源泉所得税の計算を行います。なお、支払が著しく遅延している場合を除き、支払日における電信買相場を採用してもよいとされています。

租税条約で源泉徴収を減免する手続きと必要書類

 ここでは、租税条約を適用することで支払いを受ける者(非居住者等)が享受できる減免制度について解説をします。支払者 でも行うべき作業がありますので、実務で注意が必要です。

租税条約とは?適用による税負担軽減効果

 租税条約とは、二国間の国際取引における二重課税の除去、脱税及び租税回避への対応等を目的として締結される条約で、日本は156ヵ国・地域と締結をしています(2025年8月1日現在)。

 租税条約では支払対価等に対する限度税率が定められており、当該条約を適用することで源泉所得税の軽減や免除を受けられることがあります。

 ただしこれらの適用には「租税条約に関する届出書」(以下「届出書」)の作成・提出等、所定の手続きを行う必要があります。

租税条約に関する届出書の提出手続き

 届出書は、所得の種類よって異なる書式が存在します。作成は非居住者等が行い、支払いを受ける前日までに、支払者を通して支払者の納税地の所轄税務署長に提出します。当該提出は、書面による提出に加えて、PDF形式等の電磁的様式で受け取った届出書をe-TAX等を利用して提出することもできます。

 届出書には、適用される租税条約の条文番号や限度税率が記載されています。支払者の担当者は届出書を受け取ったら、念のため記載に誤りがないか確認をしましょう。

特典条項に関する付表(様式17)の作成方法

 特典条項とは、租税条約の適用を受けるための「居住者」に関する要件を定めている条項のことで、アメリカやイギリス等、複数国の租税条約に設けられています。

 この条項が存在する場合、租税条約に関する届出書に加え「特典条項に関する付表(様式17)」と「居住者証明書」の提出が必要になります。

 「特典条項に関する付表(様式17)」は非居住者等が作成し、そこには非居住者等の名称や会社情報が記載されます。

居住者証明書の取得と提出

 居住者証明書は「非居住者等が居住している国がどこか(=租税条約上、相手国の居住者であること)」を証明する書類です。例えば、非居住者等がアメリカの居住者であれば「アメリカにおいて課税を受けるべきものとされる居住者である」ことを証明するための書類となります。

 当該書類は、非居住者等が現地税務当局から取得し、届出書に原本を添付するか、支払者に原本を提示する必要があります。なお、この場合、居住者証明書は提示の日前1年以内に作成されたものに限ります。

 なお、原本の提示を受けた支払者は「確認をした旨」「確認者の氏名(所属)」「確認日」「証明書の作成年月日」を届出書の「その他参考となるべき事項」の欄に記載し、居住者証明書の写しを作成したうえで、提示を受けた日から5年間保存する必要があります。

租税条約の届出が間に合わない場合の還付請求書

 なお、仮に届出書が期限までに提出できない場合、非居住者等は税率の軽減や免除の特典は受けられず、日本国内法の税率が適用されることになります。

 ただし、事後的に届出書及び「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書(様式11)」を、支払者を通じて支払者の納税地の所轄税務署長に提出することで、軽減税率による税額と日本国内の税率による税額との差額について還付を受けることができます。

外国法人の日本支店に対する支払いと源泉免除

 外国法人が日本に支店を持つ際、その源泉徴収が免除される「源泉徴収免除制度」という制度が存在します。本章では本制度について、詳しく解説します。

源泉免除証明書制度の概要

 源泉徴収免除制度とは、国内に恒久的施設(以下「PE」)を有する非居住者等が、一定の要件(後述)を充足し、納税地の所轄税務署長から源泉徴収免除証明書の交付を受け、この証明書を国内源泉所得の支払者に提示した場合において、一定の所得については源泉徴収が免除されるという制度です。

 非居住者等が日本にPEを有する場合、当該PEに帰属する所得については原則的に申告納税が必要となります。よって、当該制度適用により源泉徴収を免除しても、税務署は適正な納税を期待できます。併せて、非居住者・支払者双方にとっては源泉徴収の手続きが不要となり、実務の省力化に繋がるというメリットがあります。

源泉徴収が免除される国内源泉所得の範囲

 源泉免除証明書制度の対象となる所得は、PEに帰属する国内源泉所得です。ただしPEに帰属する全ての国内源泉所得が対象となっているわけではありません。

 対象となるのは、国内における人的役務の提供対価、不動産等の賃料、貸付金の利子、工業所有権、著作権等の使用料等です。

 一方で、貯金・公社債等の利子、配当、匿名組合分配金は対象から除外されています。

源泉免除証明書の交付要件

 当該証明書の交付を受けるための「一定の要件」は、以下の5つです。

1.「外国普通法人となった旨の届出」を非居住者等が提出していること
2.会社法または民法の規定による登記をすべき外国法人については、登記を行っていること
3.対象となる国内源泉所得が、法人税を課される所得のうちに含まれていること
4.偽りその他不正の行為により所得税または法人税を免れたことがないこと
5.支払者の名称、事務所等を帳簿に記録することが確実であると見込まれること

証明書の交付手続きと有効期間

 当該証明書の交付に際しては、非居住者等(もしくはそのPE)が、「外国法人又は非居住者に対する源泉徴収の免除証明書交付(追加)申請書」を作成し、提出します。

 なお、当該証明書には有効期限があり、その証明書の有効期限後も引き続き新たな証明書の交付を受けようとするときは、その証明書の有効期限の約1か月前に再度申請書を提出する必要があります。

出典:国税庁「A2-22 外国法人又は非居住者に対する源泉徴収の免除証明書の交付(追加)申請」

源泉徴収義務者が注意すべき実務上のポイント

 ここでは、源泉徴収義務者である外国法人が、その実務において注意するべきポイントを3点紹介いたします。

「みなし国内払い」とは?適用される場面

 まずは、国内源泉所得の支払いを国外で行うケースにおける注意点です。

 原則として、国内源泉所得が国外で支払われる場合は、源泉徴収の必要はありません。ただし、支払者が国内に事務所・事業所などを有する場合は、仮に国外で支払ったとしても、その支払者が当該所得を国内で支払ったとみなし、支払者は源泉徴収を行う必要があります。

源泉徴収を行う「支払」のタイミング

源泉徴収は、「支払」によってその義務が生じます。現金の交付が「支払」になるのは当然ことですが、それ以外に「支払」とされる行為について、以下に具体例を3点紹介します。

  1. 「支払」には、現実の金銭を交付する行為のほかに、元本への繰入や、銀行口座への送金等支払債務が消滅するすべての行為が含まれます。
  2. 配当等は、支払の確定した日から1年を経過した日までにその支払がない場合に「その1年を経過した日」を支払があったものとみなします。
  3. 法人の役員に対する賞与について、支払の確定した日から1年を経過した日までにその支払がない場合は「その1年を経過した日」を支払があったものとみなします。

源泉徴収税の納付期限と納付方法

 支払者は、源泉徴収した所得税および復興特別所得税を、実際に支払った月の翌月10日までに所轄税務署に納付する必要があります。ただし、前述したみなし国内払いの場合は源泉徴収をした月の翌月末日が支払期限となります。

出典:国税庁「No.2885 非居住者等に対する源泉徴収のしくみ」

まとめ

 このように、源泉徴収は国内源泉所得の種類と税率、租税条約の適用有無、源泉免除制度適用の有無等によって、適用すべき税率や減免に必要な書類が異なることがあります。


 万が一源泉徴収漏れがあった場合は、源泉徴収すべきであった金額は源泉徴収義務者である支払者から徴収され、不納付加算税や延滞税が別途課されることがあります。このような事態が発生した場合、支払先から源泉徴収漏れ相当額を後日回収するのが原則ではあるものの、支払先が非居住者等である場合、実務的には困難なケースが多いのが実情です。本来徴収すべき「源泉所得税」を支払者が負担した場合、負担額は追加の支払いとみなされ、この部分にも源泉徴収義務が生じることとなります。


 源泉徴収義務者である支払者側の担当者はこれらのリスクを踏まえ、源泉徴収について充分留意しながら実務を遂行する必要があります。

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