世界の森林の約10%(EUよりも広い面積)は、過去30年間の森林伐採によって失われており、社会的、経済的、環境的に大きな影響を及ぼしていることから、EUは、森林減少に関連する製品の消費を終わらせることにより貢献する責任があるとして、2019年に「世界の森林の保護と回復のためのEU行動の強化に関するコミュニケーション」を発しています。
EUは、既存の森林の健康を改善し、世界中の持続可能で生物多様性のある森林被覆率を大幅に拡大するための5つの主要な優先事項を掲げており、そのうちの一つが、森林減少に関係しないサプライチェーンによる製品(森林減少フリー製品)についてEUにおける消費を奨励するということで、2023年6月29日に「欧州森林減少防止規制(EUDR)」が発効されました。
EUDRは、輸入者等の規模に応じて、本年(2025年)12月末より順次適用が開始されます。EU域外から牛、コーヒー、カカオ、アブラヤシ、ゴム、大豆、木材及びこれらの関連製品を輸入する輸入者は、対象産品の育成・採取・製造時に森林減少に関与していないことについてデューデリジェンスを行い、輸入前にその輸入製品が森林減少フリー製品である旨のデューデリジェンス・ステートメント(DDS)を表明する必要があります。
このため、EUにEUDR対象産品を輸出している日本の生産者は、EUの輸入者から、輸入製品が森林減少フリー製品であることを確認するために必要な情報の提供を求められることとなります。ここで、情報提供が必要な輸出者とは、以下の2つの確認事項の両方に該当する輸出者となります。
輸入者の規模が大企業・中堅企業の場合は2025年12月30日から、零細・小規模企業の場合は2026年6月30日から適用開始となります。
輸入者は収集した情報を基に森林減少に関するデューデリジェンスを行い、森林減少のリスクが無いか、僅少である場合、森林減少フリー物品である旨のデューデリジェンス・ステートメント(DDS)を発出した上で、輸入申告を行うこととなります。
従いまして、輸入者がデューデリジェンスを行う日程を勘案して、日本の輸出者はサプライヤーから必要な情報を収集しておく必要があります。
EUの輸入者から要請を受けた日本の輸出者は、概ね以下のステップで必要な情報を
EUDR関連製品のサプライヤーから収集することになります。
輸入者は、デューデリジェンスの手順書を作成し、EU当局の求めがあれば提出すると共に、その後も定期的に見直しを行うこととされています。
日本の輸出者としても、輸入者の手順書に整合した手順書を作成しておくことが望まれます。
上述はEUDRの概略をまとめたものとなっています。欧州委員会は、EUDRに関する様々な情報を公表しています。従って、情報収集・提供等を行う際には、欧州委員会の公表資料を確認する必要があります。
(参考文献)
EUDR規則:https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32023R1115
ガイダンス文書(2025年4月15日):https://environment.ec.europa.eu/document/5dc7aa19-e58f-42a3-bbbe-f0eb2e5a1d3a_en
FAQs(第4版、2025年4月):https://circabc.europa.eu/ui/group/34861680-e799-4d7c-bbad-da83c45da458/library/e126f816-844b-41a9-89ef-cb2a33b6aa56/details
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