【事例:第2回 株式会社エービーエフキャピタル様】
ファンド運営の現場に寄り添う管理体制―ABF Capitalと東京共同会計事務所が築く「専門性と信頼」の協働モデル

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【事例:第2回 株式会社エービーエフキャピタル様】<br>ファンド運営の現場に寄り添う管理体制―ABF Capitalと東京共同会計事務所が築く「専門性と信頼」の協働モデル

 日本のPE・VCファンド市場は拡大基調にあり、投資家層の多様化や制度改正を背景に、より高度な専門性を伴う新たなスキームが次々と生まれている。

 株式会社エービーエフキャピタルは、その中でも特に異色の存在だ。業界トップクラスの料理人の独立開業を支援し、LPS(投資事業有限責任組合)[KW1.1]を活用した独自のMBOスキームを通じて、職人が真の独立を獲得することを可能にしている。単なる資金提供にとどまらず、物件探しから人材採用、SNS戦略まで徹底したハンズオン支援を行う、まさに「才能を支援する」ための特化型ファンドである。

 こうした独特の投資戦略を持つファンドの運営において、管理業務の重要性は計り知れない。多様な投資家への対応、複雑なファンドストラクチャーの管理、そして投資先への継続的なサポート。それらは単なる事務処理ではなく、制度的・税務的な精緻さと現場での即応性を兼ね備えなければ成立しない。

 その管理体制の中核を担う業務を担当しているのが、株式会社エービーエフキャピタルの中野拓真氏と東京共同会計事務所の綿谷啓三氏だ。両者の対談を通じ、小規模ファンドならではの密な連携の姿と成果へと結実させる管理業務の醍醐味を探る。

目次

≪人物紹介

株式会社エービーエフキャピタル
中野拓真 氏
東京共同会計事務所
事業開発企画室
綿谷啓三 氏

決算とミドルバック業務経験を活かし、
LPS管理体制の構築を支援

―2021年に設立された1号ファンドの成功を受け、株式会社エービーエフキャピタルが次なる挑戦として2024年5月に2号ファンドを設立した。新たに金融機関を含む多様な投資家が参画し、より高い透明性と制度対応が求められる中、共に挑むパートナーとして迎えたのが東京共同会計事務所である。

ファンドの形式は、1号ファンドの「任意組合」から、パススルー課税や導管性の確保といった税務上の利点を備える「LPS(投資事業有限責任組合)」へと移行した。だがそれはABF Capitalにとって未知の領域であり、複雑な制度を前に「果たして我々にやりきれるのか」という不安も存在していた。同社でファンド運営全般の管理統括を担当している中野氏は、次のように振り返る。

中野氏:「LPSの組成が必要となり運営の複雑性が高まるため、契約実務、税務ストラクチャー、投資家対応のすべてに高度な専門知識が不可欠でした。そのため東京共同会計事務所には、ファンドの途中から参加していただいたというより、『ゼロから我々と一緒にファンドをつくっていただいた』という感覚が強いです」

―二人三脚で2号ファンド組成をサポートしたのが、東京共同会計事務所の綿谷啓三氏だ。綿谷氏は大手監査法人の金融事業部門で約5年間にわたって、ファンドや金融機関の監査業務等を経験した後、2018年に東京共同会計事務所に入所。SPC(特別目的会社)の決算業務やファンドのバックオフィスサポートなど、多様な立場で金融実務に携わってきた。ファンドの決算とミドルバック業務の両方の知見を持つことが、今回のプロジェクトを担う決め手となった。

綿谷氏:「ファンドの決算と投資家対応などのミドルバック業務の両方を経験している担当者は、意外に多くありません。私のこれまでの経験を活かすことで、ABF Capital様のような成長フェーズにあるファンドを多角的にサポートできるのではないかと考え、当社代表から打診された際、ぜひ挑戦したいと思いました」

―2号ファンドの組成はまさに手探りの連続だった。ABF Capital側はファンド運営の最前線にいるものの、LPSという新たなビークルの管理実務は未知数。中野氏は組合契約書や法律の解釈から税務上の論点まで数え切れない疑問を綿谷氏に投げかけ、その都度、論理的に整理された回答を得られたと言う。そうした密度の高いインタラクションを繰り返し、理念を実現するための最適なスキームを両社で構築していった。

中野氏:「契約書の条文や投資家対応に関する実務など、100件以上の質問を投げかけたと思います。我々が投資家の方々から質問された際に“自分たちの言葉”で説明できるよう、東京共同会計事務所には一つひとつ噛み砕いて教えていただきました」

徹底した「わかりやすさ」と「正確性」。
精度の高い管理業務で、多様な投資家の期待に応える

―2号ファンドの特徴は投資家の多様性にある。約40名の投資家の中には、プロの機関投資家から事業の理念に共感した個人投資家まで混在しており、それぞれのニーズに応じた情報提供が求められる。この多様性を束ねる鍵となったのが、管理業務における徹底した「わかりやすさ」と「正確性」である。

綿谷氏:「たとえば、投資案件が発生した際に投資家に対して資金拠出を求めるキャピタルコール。その主な管理業務の1つに、キャピタルコール通知書の作成があります。もちろん組合契約書の条項理解などの専門的な知識は必須ですが、盲点となりがちなのが、『いつまでに、いくら振り込んでいただくか』というシンプルな情報を、いかにわかりやすくLPに提示するか。該当箇所の文字サイズやレイアウトを工夫するなどちょっとした配慮ですが、ファンド運営のリスク低減という点で意外に重要なポイントです。万が一、振込期日までに必要な額の資金が振り込まれなかった場合、投資実行ができなくなる可能性すらあります。」

―もう1つは、業務の「絶対的な正確性」である。ファンドは投資家から預かった大切な資金を扱う事業であり、1円の誤差が投資家の信頼を揺るがしかねない。

綿谷氏:「『各組合員の出資約束金額が同じなら、その持分も同じでなければならない』というのは組合の大原則です。その原則を守るため、1円単位で持分を正確に計算し、何度もチェックするようにしています。この作業こそがファンド管理の根幹をなす重要な要素であり、投資家のみなさまの信頼に応える前提条件です。ファンド運営における私たちの業務は、水道の蛇口をひねれば当たり前に水が出るのと同様、“完璧なインフラ”である必要があります」

―こうした綿谷氏の徹底したこだわりが、2号ファンドの運営の根幹を支えている。特に、少数精鋭でスピーディーな意思決定が求められるABF Capitalにとって、東京共同会計事務所の柔軟かつ正確なサポートは不可欠な存在だ。

中野氏:「我々の組織は少数精鋭で、みんな常に慌ただしく動いています。スピード感を持って動かなければならないタイミングもあり、綿谷さんにはタイトなスケジュールでのお願いをしてしまうことも少なくありません。それでも、いつも迅速かつ柔軟に対応してくれるので、本当に助かっています。さらに専門的な論点を先回りして示していただけることで、私たちは安心して、投資先と向き合うコア業務に集中することができます」

綿谷氏:「通常は1週間程度の作業期間をいただくようにしていますが、時にはご要望に応じて急なご依頼にも対応します。しかし、品質管理を徹底するために、どんな状況でも社内のダブルチェック体制は堅持しています。日頃お客様には見せない部分ですが、こうした心がけの一つひとつが高品質なサービスの提供につながっていると自負しています」

投資先の夢が叶う瞬間まで立ち会える

―ファンド管理の仕事は、日々数字や契約書と向き合う緻密な作業の連続だ。しかし、その地道な業務こそが、ABF Capitalの理念である「日本の『才能』を社会に解き放つ」の実現を支えている。綿谷氏は、「まさにそこが、この業務の醍醐味」と語る。

綿谷氏:「パソコンに向かってファンド管理業務に没頭していると、自分たちの仕事が、頭と数字だけで完結しているように感じてしまうこともあります。しかし、ABF Capital様の現時点の投資対象は飲食業界が中心なので、成果がとても実感しやすい。先日も投資先の1つである洋菓子店のケーキを買ってチームメンバーと食べたところ、『自分たちの仕事が、この味と洋菓子店やそのお客様の笑顔につながっている』と実感し、士気が高まりました。ABF Capital様のファンドには、私どものやりがいにも繋がる“夢”があるのです」

中野氏:「実は先日、その洋菓子店は無事にMBOによるイグジットを果たし、2号店も出店しさらに人気を博しています。現在はソフトクリームが大ヒットしていて、SNSで話題になった商品は1日に1,000個売れることもあるそうです。投資先の夢が現実となり、街に笑顔を生み出す場面に立ち会えることは、私たちにとって最大の報酬です」

―投資から成長、そしてイグジットまでのすべてのプロセスに関わり、その成果を実際に体験することで、単なる事務処理を超えた価値創造に携わることができる。東京共同会計事務所での業務は、自己の成長にもつながっていると綿谷氏は語った。

綿谷氏:「少数精鋭だからこそ幅広い業務に関わることができ、困ったときにはすぐに相談できる環境がある。日々さまざまな刺激を得られることが、専門家として成長し続けるためのモチベーションになっています」

ファンドの成長局面を支えるため、
管理体制の進化を目指す

―ファンドの成長とともに、新たな課題も見えてきている。投資先が増えることで管理業務は複雑になっていくという課題に対し、中野氏と綿谷氏は、それぞれの立場から次なる一手を模索している。

中野氏:「すでに現在、当社のファンドには14件の投資案件があり、今後20件程度まで拡大する見込みです。投資先一つひとつに対してきめ細かなハンズオン支援を続けていくためには、管理体制のさらなる強化が不可欠です。東京共同会計事務所に支えてもらいながらも、私たち自身の組織力も高めていかなければならないと考えています」

綿谷氏:「ABF Capital様の成長スピードに合わせてさらなる業務効率化が求められるなか、私たちの生命線である“一歩先を読む対応”を続けていかなければならないと考えています。それがファンドの価値を高め、ひいては私たちの存在意義につながると考えるからです。その意味で、システム化できる部分の洗い出しと新たな人材の発掘・育成は、両輪で進めていく必要があります」

―「日本の『才能』を社会に解き放つ」。ABF Capitalが掲げる壮大なビジョンは、今や飲食業界にとどまらず、あらゆる領域の才能へと向けられている。その事業基盤の伴走支援を行う綿谷氏にとっても、自らの仕事が持つ社会的な意義を再認識する機会となっている。

綿谷氏:「ABF Capital様との仕事を通じて、自分の業務が社会や暮らしにどうつながっているかを改めて実感しています。つまり、会計やファンド管理に関する専門性を高めるのはもちろんのこと、周辺領域のスキルやノウハウを蓄積していくことで自分の“幅”を広げていくことが欠かせません。サステナビリティやESG、脱炭素といった社会問題がビジネスに直結することが増えているいま、こうした視点はさらに重要になってくると感じています」

第1回ではABF Capital CEO熊原氏に事業ビジョンや今後の展望について紹介しています。

【事例:第1回 株式会社エービーエフキャピタル様】才能ある職人が“報われる社会”をつくる一独自の支援スキームで、職人の「真の独立」を叶えるABF Capitalの挑戦

 なお、本インタビュー記事は当事務所での取り扱い案件のご紹介を目的として作成したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。最終的な投資決定は、お客様ご自身でお願いいたします。また、個別事案の検討・推進に際しては、適切な専門家にご相談下さいますようお願い申し上げます。

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