国際課税制度と実質支配関係

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国際課税制度と実質支配関係

 わが国の国際課税制度の多くが国内の所得が国外に移転することを防止することを目的として制度設計されています。外国子会社合算税制においては、一定の外国関係会社の所得の内国法人・居住者への合算課税を行い、移転価格税制においては、国外関連者との取引が独立企業間価格で行われたものとみなして、内国法人の所得を計算し、過少資本税制、過大支払利子税制においては、それぞれ国外支配株主等に対する支払利息、対象支払利子等の損金算入の制限をすることにより所得の国外移転を防止しています。

 上記各税制を適用する上で、外国関係会社、国外関連者、国外支配株主等、関連者を規定し、それらに該当するかどうかは、持株関係による支配に着目して、一定の持株割合を判定基準にしています。一方、持株割合基準が満たされなくても、実質支配関係がある場合にも該当するものとされています。実質支配関係の内容は各税制によって異なっており、以下その内容を比較します。

目次

外国子会社合算税制における外国関係会社

 外国子会社合算税制は、わが国の内国法人等が、実質的活動を伴わない外国関係会社を利用し、わが国の税負担を軽減・回避する行為に対処するため、外国子会社等がペーパー・カンパニー等である場合又は経済活動基準のいずれかを満たさない場合には、その外国子会社等の所得に相当する金額について、内国法人等の所得とみなし、それを合算して課税し、経済活動基準を全て満たす場合であっても、実質的活動のない事業から得られる所得(いわゆる受動的所得)については、内国法人等の所得とみなし、それを合算して課税する制度です(注1)。

外国関係会社の持株割合による判定

居住者株主等(居住者及び内国法人並びに特殊関係非居住者)の外国法人にかかる以下の割合のいずれかが50%超である場合の外国法人が外国関係会社とされます(措法66の6②一イ)

 (1) 居住者株主等の外国法人にかかる直接株式等保有割合および間接保有株式等保有割合を合計した割合。株式等保有割合は、居住者等株主等の有する外国法人の株式等の数又は金額がその発行済株式等の総数又は総額のうちに占める割合をいいます。
 (2) 居住者株主等の外国法人にかかる直接保有議決権保有割合および間接保有議決権保有割合を合計した割合。議決権保有割合は、居住者等株主等の有する外国法人の議決権の数がその総数のうちに占める割合をいいます。
 (3) 居住者等株主等の外国法人に係る直接保有請求権保有割合および間接保有請求権保有割合を合計した割合。請求権保有割合は、居住者等株主等の有する外国法人の株式等の請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の額がその総額のうちに占める割合をいいます。

外国関係会社の実質支配関係による判定

 持株割合基準を満たさなくても、居住者または内国法人との間に実質支配関係がある外国法人は、外国関係会社とされます(措法66の6②一ロ)。実質支配関係は、居住者又は内国法人が外国法人の残余財産のおおむね全部を請求する権利を有している場合における当該居住者または内国法人と当該外国法人との間の関係その他の政令で定める関係をいいます(措法66の6②五)。

 その他の政令で定める関係は、居住者または内国法人と外国法人との間に次に掲げる事実その他これに類する事実が存在する場合をいいます(措令39の16①)。

 (1)居住者等が外国法人の残余財産のおおむね全部について分配を請求する権利を有していること。
 (2)居住者等が外国法人の財産の処分の方針のおおむね全部を決定することができる旨の契約その他の取決めが存在すること。
 (2)の「財産の処分の方針のおおむね全部を決定することができる旨の契約その他の取決め」について、「会社の通常の事業活動における商品の販売等もこれに含まれます。・・・こうした様々な場面における財産の処分に関する方針のおおむね全部について決定することができる旨の契約その他の取決めを通じた支配関係に着目したものです。」という立法担当者の説明がされています(注2)。


(注1)財務省HP 外国子会社合算税制の概要
(注2) 財務省「平成29年度 税制改正の解説」664頁  税制改正の解説

移転価格税制における国外関連者

 移転価格税制は、海外の関連企業(国外関連者)との間の取引を通じた所得の海外移転を防止するため、海外の関連企業との取引が、通常の取引価格(独立企業間価格)で行われたものとみなして所得を計算し、課税する制度です(注3)。

国外関連者の持株割合による判定

 国外関連者は、法人との間にいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式又は出資の数又は総額の50%以上の数または金額の株式または出資を直接又は間接に保有する関係のある外国法人(親子会社)(措法66の4①)、二の法人が同一の者によってそれぞれその発行済株式等の50%以上の数または金額の株式または出資を直接又は間接に保有される場合における二法人の関係がある外国法人(兄弟会社)をいいます (措令39の12①二)。

国外関連者の実質支配関係による判定

 また、次に掲げる事実その他これに類する事実が存在(特定事実)することにより、一方の法人が他方の法人の事業の方針の全部又は一部につき実質的に決定できる関係(措令39の12①三)、一の法人との間に特定事実が存在し、その一の法人が事業の方針の全部若しくは一部につき実質的に決定できる関係にある二法人の関係がある外国法人も国外関連者とされています(措令39の12①四)。

 (1) 他方の法人の役員の二分の一以上または代表する権限を有する役員が、一方の法人の役員若しくは使用人を兼務している者または一方の法人の役員若しくは使用人であつた者であること。
 (2) 他方の法人がその事業活動の相当部分を一方の法人との取引に依存して行っていること。
 (3) 他方の法人がその事業活動に必要とされる資金の相当部分を一方の法人からの借入れにより、または当該一方の法人の保証を受けて調達していること。


(注3) 財務省HP 移転価格税制の概要

過少資本税制における国外支配株主等

 過少資本税制は、海外の関連企業との間において、出資に代えて貸付けを多くすることによる租税回避を防止するため、外国親会社等(国外支配株主等)の資本持分の一定倍率(原則として3倍)を超える負債の平均残高に対応する支払利子の損金算入を認めないこととする制度です(注4)。

国外支配株主等の持株関係による判定

 内国法人との間に、その内国法人の発行済株式又は出資の総数又は総額の50%以上の数または金額の株式または出資を直接または間接に保有する関係がある非居住者または外国法人(措法66の5⑤一)、内国法人と外国法人が同一の者に発行済株式等の50%以上の株式等を直接または間接に保有される場合における外国法人(措令39の13⑫二)が国外支配株主等とされます。

国外支配株主等の実質支配関係による判定

 また、内国法人と非居住者または外国法人(非居住者等)との間に次に掲げる事実その他これに類する事実が存在することにより、非居住者等が内国法人の事業の方針の全部又は一部につき実質的に決定できる関係がある場合の非居住者等は、国外支配株主等とされます。

 (1) 内国法人がその事業活動の相当部分を非居住者等との取引に依存して行っていること。
 (2) 内国法人がその事業活動に必要とされる資金の相当部分を非居住者等からの借入れにより、または非居住者等の保証を受けて調達していること。
 (3) 内国法人の役員の二分の一以上または代表する権限を有する役員が、外国法人の役員若しくは使用人を兼務している者または外国法人の役員若しくは使用人であつた者であること。


(注4)財務省HP 過少資本税制の概要

過大利子支払税制における関連者

 過大支払利子税制は、所得金額に比して過大な利子を支払うことを通じた租税回避を防止するため、対象純支払利子等の額(対象支払利子等の額-控除対象受取利子等合計額)のうち調整所得金額の一定割合(20%)を超える部分の金額につき当期の損金の額に算入しないこととする制度です(注5)。

 対象支払利子等の額は、支払利子等の額のうち対象外支払利子等の額以外の金額をいい、対象外支払利子等の額は、支払利子等を受ける者のわが国の課税対象所得に含まれる(外国法人である場合には法人税法の課税対象となること)支払利子等、その他所定の利子等をいいます。

 令和元年改正で、関連者に対する支払利子等だけではなく、第三者に対する支払利子等も本税制の対象となりましたが、同税制の適用において、以下のように関連者は改正後も所定の機能を果たしています。

 (1) 国内課税となる非関連者を介在させた国外の関連者への支払利子等は対象外支払利子等から除かれます(措法66の5の2②三)。
 (2)国内課税の関連者を介在させる場合には、その関連者側において、国内の関連者から受ける受取利子等について控除対象受取利子等合計額への算入を制限する措置がとられています(措令39の13の2㉓)。

関連者の持株関係による判定

 一方の法人が他方の法人の発行済株式若しくは出資の総数若しくは総額の50%以上の数もしくは金額の株式もしくは出資を直接若しくは間接に保有する関係がある他の法人、個人が法人の発行済株式等の総数もしくは総額の50%以上の数もしくは金額の株式もしくは出資を直接若しくは間接に保有する関係がある個人(措法66の5の2②四)、二の法人が同一の者によってそれぞれその発行済株式等の総数又は総額の50%以上の数又は金額の株式等を直接または間接に保有される場合における他方の法人(措令39の13の2⑰二)を関連者といいます。

関連者の実質支配関係による判定

 次に掲げる事実その他これに類する事実が存在することにより二の法人のいずれか一方の法人が他方の法人の事業の方針の全部又は一部につき実質的に決定できる関係がある場合の他方の法人は関連者とされます(措令39の13の2⑰三)。

 (1) 他方の法人の役員の二分の一以上または代表する権限を有する役員が、一方の法人の役員もしくは使用人を兼務している者または一方の法人の役員もしくは使用人であった者であること。
 (2) 他方の法人がその事業活動の相当部分を一方の法人との取引に依存して行っていること。
 (3) 他方の法人がその事業活動に必要とされる資金の相当部分を当該一方の法人からの借入れにより、または一方の法人の保証を受けて調達していること。


 (注5) 財務省HP 過大支払利子税制の概要

まとめ

 外国子会社合算税制における外国関係会社の持株割合による判定は持株割合50%超であるのに対し、移転価格税制における国外関連者、過少資本税制における国外支配株主等、過大利子支払税制における関連者の持株割合による判定は、持株割合50%以上になります。

 外国子会社合算税制における外国関係会社の実質支配関係による判定は、財産の処分に着目して行われるのに対し、移転価格税制における国外関連者、過少資本税制における国外支配株主等、過大利子支払税制における関連者の実質支配関係による判定は、営業取引、人的関係および資金調達の状況に着目して行われます。

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執筆者

  • 石塚 洋一

    東京共同会計事務所 事業開発企画室 シニアアドバイザー
    公認会計士
    税理士

    監査法人にて監査業務を経験後、税理士法人にて税理士法人にて税務コンプライアンス、税務アドバイザリー業務に従事。特に国際税務の分野で、多国籍企業の税務ガバナンス、税務調査対応と税務争訟、移転価格における調査対応・相互協議、事前確認、国際取引についての税務アドバイス業務を専門とする。また、大学発スタートアップ企業等の監査役、会計専門職大学の租税法担当教員の経験を有する。

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