【事例:株式会社SUBARU様】
「守り」から「攻め」のEPA活用へ
業界共通プラットフォーム「JAFTAS®」と目指す “オールジャパン”での競争力向上と信頼のモノづくり

  • Focus Tokyo Kyodo
  • JAFTAS
  • 国際税務・国際ビジネス
【事例:株式会社SUBARU様】<br>「守り」から「攻め」のEPA活用へ<br>業界共通プラットフォーム「JAFTAS®」と目指す “オールジャパン”での競争力向上と信頼のモノづくり

グローバル市場における競争環境は、かつてないスピードで変化している。とりわけ自動車業界の競争環境は激烈な状況である。
こうした中、FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)による関税削減は、もはや競争力を高める「手段」ではなく「必須条件」へと位置づけられている。

しかし、EPAを活用するための対応業務はその複雑性・難易度を理由に困難に感じる企業も少なくない。専門知識の習得、サプライヤーとの連携、検認への備えなど、求められる実務は多岐にわたり、多くの企業がリソースや知識の不足に悩んでいる。特に、専門部署を持たない企業にとって、EPA業務への対応は大きな経営課題の1つだ。

こうした中、人員不足や業務の属人化から脱却するために、株式会社東京共同トレード・コンプライアンス(TKTC)との顧問契約および
「JAFTAS®」の導入に至ったのが株式会社SUBARUである。同社が「守り」から「攻め」のEPA活用へと転換を遂げた経緯と成果について、同社の海外事業本部 海外企画部兼営業戦略室の担当部長を務める小清水邦周氏に話をうかがった。

目次

≪人物紹介

株式会社SUBARU
海外事業本部 海外企画部兼営業戦略室 担当部長
スバルヨーロッパ社長
小清水邦周 氏

EPA活用がお客様への提供価値に繋がる
―適用範囲の拡大に向けた属人化脱却への挑戦

―SUBARUでは以前から中南米、アジア向けなどにEPAを活用し、関税削減に取り組んできた。2019年2月に「日EU・EPA」※1が発効され、さらに既に発効している「CPTPP(TPP11)」※2や、発効に向けて政府間調整が進む「RCEP」※3といった大規模なメガ協定が広がる中、同社では「EPA適用範囲をさらに広げていきたい」という機運が高まっていた。しかし、当時EPA業務を担っていたのは実質2名だけ。EPA適用拡大に向けた社内のリソースが圧倒的に足りていなかった。

小清水氏:「当社は自動車メーカーとしては規模が小さいですが、取り扱う部品点数や対象となる協定の複雑さは他社と変わりません。

EPA業務を担当する人財が限られている中で、専門性の高い業務が特定の個人に集中してしまう属人化が課題となっていました。もし担当者が1人でも欠けると、原産地証明における全社の判定業務が止まってしまいます。さらに、各国の通商規定や外部環境の変化への対応が遅れることで輸入時に意図せぬ申告ミスを引き起こすなど、深刻なコンプライアンスリスクを招く恐れもありました」

—一方で、EPA活用がもたらすメリットは明らかだった。関税というコストを削減し、適正な価格で商品を届けることは顧客への提供価値そのものに関わるため、「EPAの適用範囲を広げたい」という思いは強かった。しかし、当時は日々の業務をこなす「守り」の対応だけで手一杯だったと小清水氏は振り返る。

小清水氏:「本来、お客様は商品の価値そのものに対して対価を支払うもの。そこに商品価値とは直接的に関係しない関税が上乗せされることは、市場における競争力を削ぐ大きな要因になります。適正な価格でお客様に商品をお届けしたいという思いがありました。

しかし、当時の体制では目の前の実務を回すのが精一杯。そこで、EPAの適用範囲を広げる『攻めの体制』を構築するために、EPAの専門知識を持った外部パートナーのサポートを得ることにしたのです」

―複数の大手コンサルティングファームを含めて比較検討する中で、最終的にパートナーに選んだのが、株式会社東京共同トレード・コンプライアンス(TKTC)だった。選定の背景には、EPA相談デスクでの対応など、実際の業務接点を通じて得られた信頼があった。

小清水氏:「TKTCは経済産業省の『EPA相談デスク』を長年受託しているため、業界全体で高い信頼感がありました。当社の担当者も『EPA相談デスク』を何度か利用したことがあり、EPAに関する知識、自動車業界についての知見の深さ、そして丁寧なコミュニケーションなど身をもって実感していました。

―具体的に提携のきっかけとなったのは、SUBARUが主催したサプライヤー向けのEPAセミナーだった。講師をTKTCに依頼した際、制度の解説に留まらず、同社の置かれた状況や現場の事情に寄り添った、柔軟できめ細かいアドバイスが得られたことが印象的だったという。

小清水氏:「パートナー選定にあたり、TKTCは当社のEPA対応状況に合わせた個別ワークショップの開催を含め、現場目線の提案をしてくれました。加えて、サプライヤー向けのSUBARU専用サポートデスクを立ち上げるなど、実務を強力にバックアップする支援体制を整えてくれた点も、非常に心強く感じました 。

当社のみならず、サプライチェーン全体を共に支えてくれるパートナーであると確信できたことで、TKTCとの顧問契約の締結に至りました」

※1「日EU・EPA」:日EU経済連携協定
※2「CPTPP(TPP11)」:環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定
※3「RCEP」:地域的な包括的経済連携協定

検認を乗り越えたTKTC JAFTAS®の伴走支援サービス
メーカー・サプライヤー・EPA専門家による三位一体の協力体制

―TKTCとの顧問契約の締結後、実務面でもっとも大きな効果を発揮したのが、輸入国税関による「検認」への対応だった。「検認」とは、EPAを利用して輸出した産品について、輸入国の税関が事後的に原産性を満たしているかを調べる査察のことをいう。不備が見つかれば関税の追徴やペナルティが発生するだけでなく、企業の信頼失墜にも直結する。

SUBARUはこれまでに、カナダ等からの検認を3回経験した。そのうちの1件は1年以上にわたる長期対応となったという。

小清水氏:「当局から問い合わせがきたというだけで、社内には凄まじい緊張が走ります。当局からの質問は『この書類を提出してください』といった漠然としたものが多いため、専門的な知識がなければ質問の意図を掴むことが非常に難しい。もし我々が回答を誤れば、当局がその回答を業界のスタンダードだと捉えかねず、影響は日本の自動車業界全体に及ぶ可能性さえあり、担当者のプレッシャーは相当なものでした」

—検認対応の難しさは、当局からの質問が汎用的であることにも起因する。当局は全業界向けに標準的な質問を投げかけてくるが、それを自動車業界の文脈で解釈し、実際の生産実態に即して適切に回答することは容易ではない。

長期間に及ぶ検認への対応は「先の見えない不安がある」と小清水氏は語る。そうした不安に寄り添い、専門家として伴走支援し続けたのがTKTCである。検認サポートでは当局から提出を求められた書類の真の意図を読み解き、「当局はここを懸念しているから、業界の実態に即してこの資料をこのロジックで提示しましょう」といった緻密なアドバイスを行い、EPA活用の専門家としての知見と自動車業界における豊富な経験を基に力強く検認対応をリードしていった。

小清水氏:「TKTCは当局からの問い合わせがあるたび、追加質問を招かず、早期解決につながる回答をアドバイスしてくれました。初めての検認の際にも、社内のみならずお取引先様との調整を含めて対応していただき、専門知識と経験に基づいた具体的なアドバイスのおかげで問題が発生することなくスムーズに検認を終えることができました。

専門家の伴走があるかないかで、実務の精度はもちろん、担当者の業務を進める上での安心感が大きく変わってきます。今後の検認対応においても、過去と異なるルートからの問い合わせが想定されるため、継続的な専門家のサポートは不可欠だと考えています」

―また、サプライヤーとの連携においても、「TKTCが『信頼できる第三者』として介在するメリットは大きかった」と小清水氏は語る。原産地証明には、サプライヤー側の原価情報などの機密情報が必要になるケースがあるが、サプライヤーからするとこれらの情報はメーカーであるSUBARUに直接開示しにくい情報でもある。

小清水氏:「お取引先様が当社に直接見せたくない情報を、TKTCが第三者の立場でチェックし、書類の品質を担保する役割を担ってくれました。これにより、お取引先様の機密を守りつつ、当局に対しても不備のない根拠書類を揃えることが可能になりました。メーカー、サプライヤー、そしてEPA専門家という三位一体の協力体制が、EPA活用の最大化と、業務遂行におけるコンプライアンスの質を一段引き上げてくれたと感じています」

「JAFTAS®」システム/コンサルティングをフル活用
コンプライアンス品質向上と業務効率化による「攻め」の戦略的EPA活用

―EPA適用範囲の拡大にあたり、SUBARUではJAMAが主体となって進め、TKTCが開発・提供を担い、自動車業界における原産資格調査の標準化を目指したプラットフォーム「JAFTAS®」を導入した。「JAFTAS®」は複雑な原産地規則の判定ロジックをシステム化し、サプライヤーへの調査依頼から回答回収、根拠書類の作成までを一気通貫で管理できるクラウドシステムだ。これによって社内プロセスの可視化、標準化が進み、各営業に分散されていたEPA業務の集約化につながったという。

小清水氏:「『JAFTAS®』の導入で各案件の進捗や実務にかかる時間が明確に可視化され、大幅に業務効率が上がりました。これまでは目の前の依頼を処理するだけで精一杯でしたが、『JAFTAS®』導入に伴い事務作業の効率化が実現し、それによって生まれた業務余力を活用することで、EPA業務の担当者から営業に対して『このオプションを使えばもっと関税が下がる可能性がある』といった戦略的な提案を能動的に行えるようになりました。

加えて、現在当社では営業部門の中にEPA専門の組織体制が整いつつありますが、現地取引先との価格交渉の場において、関税削減効果という明確な根拠に基づいたアドバイスを即座に提供できる体制は、ビジネスのスピード感を劇的に引き上げたと感じています」

—「JAFTAS®」導入による業務効率化に加え、TKTCによる個別の実務支援も大きな成果を生み出している。

小清水氏:「『JAFTAS®』の導入にあわせてTKTCから提案してもらった個別の集計ツールも、業務効率化に寄与しています。かつてはお取引先様からの問い合わせに対応するだけでも精一杯でしたが、今は『いかにお取引先様の負荷を減らし、調査の精度を高めていくか』といった、実務の質をより向上させるための仕組みづくりに注力できるようになりました」

—こうした変革は自社内に留まらず、サプライチェーン全体にも波及している。例えば、複数の自動車メーカーと取引があるサプライヤーにとって、メーカーごとに異なる調査フォーマットに対応することは大きな負担であるが、業界共通プラットフォームである
「JAFTAS®」を利用することで、対応にかかる業務負荷が軽減された。

小清水氏:「業界共通のプラットフォームを持つことは、お取引先様にとっても大きなメリットです。標準化された回答方式であれば、一度システムに慣れればひと通りの規則が網羅されており、迷うことなく回答できるからです。業界全体で共通の言語でコミュニケーションを取ることが、結果としてサプライチェーン全体の強靭化と効率化に直結していくと考えています」

業界共通プラットフォーム「JAFTAS®」が、
『“オールジャパン”で信頼のものづくり』を支える鍵に

—SUBARUのEPA活用は、現在さらなる拡大を見せている。今後は完成車の輸出だけでなく、バリューチェーン全体での収益拡大を目指し、補修部品領域での活用を本格化させていく方針だ。

小清水氏:「多品種少量でありながら管理が極めて煩雑な補修部品においてEPAを適用するのは難易度が高いですが、『JAFTAS®』という確固たるデジタル基盤と、TKTCの知見を融合させることで、さらなる関税の最適化を進めていけると考えています」

—こうした攻めの姿勢の背景には、EPAという仕組み自体の位置づけの変化がある。かつてEPAは、他社に差をつける「競争力を強める」ための手段であった。しかし、各国が協定を結び、更にメガ協定などの包括的な協定がグローバル市場の主流となった今、急成長しつつある海外の新興メーカーの圧倒的なコスト競争力は、日本ブランドにとって無視できない脅威となっている 。

小清水氏:「新興メーカーは圧倒的なスピードとコスト競争力で、市場の勢力図を塗り替えようとしています。こうした強大な競合に対して日本メーカーが個別にバラバラの対応をしていては、到底太刀打ちできません。

だからこそ、『JAFTAS®』のような業界共通のプラットフォームで実務を標準化し、非競争領域でのコストを徹底的に排除する“オールジャパン”の体制が必要だと感じています。効率化によって生まれたリソースを、商品開発や販売戦略といった競争領域に集中させることが、日本メーカーが今後グローバルで生き残るための鍵となるはずです」

—さらに、小清水氏は業界全体での取り組みの重要性を強調する。他自動車メーカーとの共同開発車など、メーカー間のアライアンスによる対応が増える中、業界共通のプラットフォームを持つことの価値はますます高まっているという。

小清水氏:「他社との共同開発では、お取引先様との強固な連携やメーカー間の枠組みを越えた協力が不可欠です。アライアンスが深化する中では、個々の会社が別々のやり方で原産地証明を行うのではなく、業界全体でプラットフォームを共通化し、効率化していくことが必須条件だと考えています。個社間の取引の枠を超えて、業界全体で標準化を進めることで得られるメリットは極めて大きく、当社も注力していく考えです」

—こうした外部環境の激しい変化に対応していくためには、高度な専門性と情報収集能力で世界情勢を的確に捉えることも欠かせない。

小清水氏:「目まぐるしく変わる通商情勢や規制の変化に遅れずについていくには、実務の専門性はもちろん、精度の高い情報をいち早くキャッチする能力が不可欠です。自社だけで世界の最新動向を常に網羅し、実務に落とし込み続けることには限界があります。

だからこそ、TKTCのような専門家集団に、実務と情報の両面でバックアップいただける意義は非常に大きいと考えています。高い専門知見に加え、最新の情報をタイムリーに分析して届けてくれる力は大変心強く、今後もぜひ強力なパートナーとして並走してもらえればと思っています。

日本ブランドが長年培ってきた歴史や伝統、そして揺るぎない信頼という強みを活かすためにも、正しいルールに基づいて誠実にEPAを活用し、安定的なコンプライアンスを維持し続けることが不可欠です。その地道な積み重ねこそが、世界中のお客様に対する誠実なモノづくりの証明であると考えています」

なお、本インタビュー記事は当事務所での取り扱い案件のご紹介を目的として作成したものであり、導入判断の代替となるものではありません。記載内容の妥当性は法令等の改正により変化することがあります。また、個別事案の検討・推進に際しては、適切な専門家にご相談下さいますようお願い申し上げます。
©2026 東京共同会計事務所 無断複製・転載を禁じます。

関連コンテンツ

ページトップに戻る