金融子会社設立ブームと財務プロフェッショナルについて2回に分けてご説明します。
目次
本稿の執筆者は本文中で言及される活動・サービスに関与している立場であり、
その関係性を開示いたします。本稿は執筆者の実体験および個人的見解に基づく内容であり、サービスのPRを趣旨としたコラムとなります。
80年代から90年代の金融子会社の設立ブームを振り返ってみると、当時の財務プロフェッショナルに対する期待が良くわかると思います。前職での米国金融子会社の設立の経緯や目的などについて、自身の経験を基に解説していきます。
それまでの金融子会社は、財テクブームの中で資金運用目的の設立や、石油会社の輸入ファイナンスを目的とした設立などであり、海外の子会社での資金調達のためのグループ金融を目的としたものはありませんでした。私が前職で米国金融子会社の設立を検討したのも、通信子会社の複数拠点との資金のやり取りを銀行の提供するキャッシュマネジメントシステム(CMS)により単純化することに成功したからです。1社で成功すれば、その方式を米国4子会社に拡大展開することを検討するのは当然の流れだと考えており、ちょうど1984年のことでした。
設立形態については、主に二つの選択肢がありました。
一つは持株会社を設立して、持株会社の傘下にすべての子会社をおく方式で、その持株会社に金融子会社の機能を持たせる一番自然な形態です。しかし、当時は事業部制の文化が濃い時代で、本社との間に持株会社が入ることに対して、「事業責任があいまいになる。独立性が保てない。」という反対意見がありました。プーリングのような資金の過不足の調整によって、利益の過不足の調整で無駄な税金を納めない連結納税などが可能になるという財務的には合理的な全体最適よりも、事業部の自主性・独立性という部分最適が優先することになります。そうなると独立した金融子会社を設立することになりますが、あくまで別会社としての第三者取引原則を適用するための形式を整える必要があります。最も重要なことは税務上のリスク対応です。いわゆる過少資本問題で、投資銀行からのアドバイスを受ける際にこの点を徹底的に検討しました。具体的には、以下の通りです。
①本社保証を避け、念書のレベルにとどめること。
②特定の子会社の業績が悪化するケースでは資本の増強をお願いする。さもなければ融資は停止する。
このときの金融子会社の設立には、いくつかの偶然の賜物という幸運がありました。
第一に、当時他の電機メーカーで金融子会社が設立され、すでに銀行保証のコマーシャルペーパーが発行されて低金利の調達がされていたことです。金融子会社の目玉の低コストの資金調達が可能になり、米国の子会社には銀行からの融資の間接金融から直接金融への動きが出てきていました。その環境下で当時のメイン銀行もコマーシャルペーパーの保証実績を作りたいという背景もあり、金融子会社設立計画をスムーズに進めることができました。当時は、米国子会社4社がそれぞれ個別に取引していたので、メイン銀行の場合はニューヨーク支店だけでなく、シカゴ支店、サンフランシスコ支店と複数の支店取引があり、この取引をニューヨークにすべて統合するのは大変な作業と思えましたが時代の流れが幸いしました。
第二に、金融子会社の実務を任せるローカルスタッフの採用です。これはなかなか難しく、たまたま当社を訪問して来た米銀の担当者の方に愚痴をこぼしたところ、「うちに最適な人材がいます」と言っていただきました。その銀行の日系担当に名門ウォートンスクール卒業で聡明、システムに強いが、コミュニケーション能力が不足する人材がくすぶっているので一度会ってみたらどうかとのことで、結果的に彼を採用することになりました。これが大きな変化を生み出してくれました。彼は、私の語るインフラ整備をすぐに具体化して、金融子会社に必要な管理システムと管理シートを作成してくれました。
第三に、米国の子会社の銀行取引条件を比較してみると明らかにプライシングに差があるように思います。子会社それぞれの経理責任者が銀行取引を行うと十分な知識なく交渉することになり結果として高いコストを支払うことになります。金融子会社設立によって各社のプライシングの差がなくなってコストカットに繋がり、今後の子会社の経理担当者も銀行取引で悩む必要が無くなったはずですので、結果的に最も良い取引条件に集約できたのではないかと考えます。このようなわけですから彼らは文句はないはずです。さらに今後の子会社の経理担当者も銀行取引で悩むこともなくなります。
第四に、子会社から銀行から有利なレートで借りられるということで交渉してよいかという話がたまにありますが、その融資がいつでも借りられていつでも返済できる条件なら検討しましょうと回答していました。
期間の設定された融資と、当座貸越の違いを理解せずにレートだけにこだわるのは得策ではないと考えますが、金融リテラシーがなければそうした考えに至ってしまうことも仕方がありません。金融子会社のレートは当座貸越でのレートだということを理解してもらう必要がありました。これは、1社ではなく4社合計で資金ポジションが日々凸凹するので相殺できることで提供することが可能になるものです。不足資金は自動的に融資され無駄な資金は自動的に運用されるこのメリットはどの金融機関からも受けられません。
次回も引き続き金融子会社について解説していきます。
執筆者のご紹介

一般社団法人CFO協会
主任研究員
大田 研一
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