金融子会社設立ブームと財務プロフェッショナルについて2回に分けてご説明します。
目次
本稿の執筆者は本文中で言及される活動・サービスに関与している立場であり、
その関係性を開示いたします。本稿は執筆者の実体験および個人的見解に基づく内容であり、サービスのPRを趣旨としたコラムとなります。
金融子会社の設立に対しては、メーカーの文化にある「事業部としての独立性」に対して神聖犯すべからずの考え方が強いものです。実際に、他社で同様のグループファイナンスの金融子会社を設立しようとして社内で反対され断念したというお話を聞くことも当時は少なくありませんでした。しかし、私の前職では比較的受け入れが容易でした。これは多分に米国通信子会社での成功事例がやはり大きく影響していると思います。
財務が様々なプロジェクトを立ち上げて社内に向けて説得する場合に、過去の成功事例を積み上げることで、信頼を勝ち取る必要があります。よく小さく始めて大きく育てると言いますが、初めのスタートは絶対に失敗しないことが重要です。いくつかのプロジェクトを成功事例として社内のサポートを受けやすい環境を作ることが大切です。また、上司の仕事は「部下に成功できるプロジェクトの機会を与え人材の育成をすること」だと理解して欲しいと思います。プロジェクトを立ち上げ、実行して、無事に完了する成功体験の面白さがプロフェッショナルとしての自信となります。
金融子会社の設立を提案した時に考えたことは、財務のプロフェッショナルは経理のプロフェッショナルと異なり海外に出向できる機会が少なく、それが財務人材の育成のハンデになりそうだということでした。しかし、それによって、海外を経験した私と異なり、子会社の現場での実務経験なく金融子会社での経験に限定されることは視野を広げる成長機会を奪ってしまったのではという反省があります。海外に出なければ成長の機会が持てないのかどうか、日本に居ながら同様の成長機会が持てないのか自問することがあります。
また、プロフェッショナルとして投資銀行やコンサル会社などのアイデアや提案を受けるようになるためには自分で利益を生み出し現場に還元するための仕組みが必要です。技術の世界では研究開発の考え方があって将来の利益に対して投資する考え方がありますが、メーカーの財務(金融子会社)では、赤字はもちろん非難の対象となりますが、利益を出せば人の不幸(子会社の資金繰りの悪化が利益に結び付く)で利益を得ているというやっかみ受けることも少なくありません。そのため、この利益を別の形で還元するために思いついたのが販売金融です。第三者のリース会社では取れないリスクを、グループファイナンスでの利益で賄う(つまりは引当金を積む)ことで可能になると考えました。
実際に困った問題があったことも契機になりました。前職の会社は法人向けの交換機や電話機等を販売する場合に、代理店経由ですが必ず中小企業の最終顧客から分割払いのリースを要求されます。現金で払うお客さまはいません。常に何か不測の事態を想定して銀行の信用枠(クレジットライン)は残すという保守的な財務政策を取ります。そのため、売り手としては販売上の競争力を維持するため、魅力的なフィナンスを提供しなくては勝てないことになります。販売金融の重要性については自動車業界のケースが良く知られているのでご存じと思いますが、当時は銀行系のリース会社と提携して、販売店支援のリースプログラムを持っていました。しかし、強みを持つカジノの大型案件は銀行のコンプライアンスで、リースファイナンスの提供ができないことや、リスクがあると判断されると引当をリース会社との間に積んで、何かあったらその金額内で損失を補填しなくてはいけないという具合に使い勝手が悪いものでした。そうであるならば、利益を定期的に計上できる金融子会社でリース事業を始めようということになりました。
この考え方も、いろいろな金融機関から様々な提案を受けて検討し、最終的にアドバイザーを指名して前に進めることになりました。こうした動きも、十分な利益が出ているからできることです。
当時、アイデアが良ければ相手を選ばずに実行する会社だという評価・信頼を得て沢山の提案をもらえる環境があったことは、その後の環境の変化に対して適応する上で大きな助けになりました。自社に優秀な人材がいなくとも外部に沢山の無料アドバイザーを持っているのと同じだからです。現在の日本企業の財務に提案や知恵をさずけてくれる優秀なバンカーやコンサル会社がいるのかわかりませんが、日本がNO.1であった時代は別として、「提案が良ければ提案を受けるという姿勢」がなければ、誰も貴重な時間をかけて訪問することなどないのです。
金融子会社は、財務の知恵でどれだけの利益が生み出され、知恵に再投資され新しい取り組みが可能になるかを示せたのではないかと思います。外部のアドバイザーとのネットワークが新しいアイデアを得るうえでは重要であり、そのためにはやはり信頼を得る必要があるということを学びました。しかし、これも海外だからできたという側面ものではないかと感じます。やはり、「天の時、地の利、人の和」という成功の条件は米国の方が得やすいと思います。
リース事業の立ち上げでは、自社でインフラを抱えるにはまだ小さいということからバックオフィス業務を外部に委託していました。米国で事業をする上でのリスクに「人材の定着」が挙げられます。規模が小さいとスタッフ一人一人の重みが違い、離職のリスクは高いと言えます。米国には、規模が大きくなるまでは外部にアウトソースすることが簡単にできる市場があることが新規事業を決断する上で大きな後押しになったことは否めません。日本企業の財務人材(トレジャリー)の人材不足を解消するのには、アウトソースしかないと考えたのもこうした経験から来たのかもしれません。
執筆者のご紹介

一般社団法人CFO協会
主任研究員
大田 研一
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