main visual

【Vietnam Newsletter】関税リスクを軽減するための一つ方法としてベトナム事前教示制度概要の紹介
/ベトナムの新労働組合法の改正点の概要

 

 平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。東京共同会計事務所のベトナムデスクです。
 ベトナム進出に係る様々な税務・法務情報等を提供したいと考え、本メルマガを送らせて頂いております。

 今回のテーマは、次の通りです。

1. 関税リスクを軽減するための一つ方法としてベトナム事前教示制度概要の紹介
2. ベトナムの新労働組合法の改正点の概要

 なお、各コラムは執筆者により「寄稿」されたものであり、その文責は執筆されたコラムに限定されています。

関税リスクを軽減するための一つ方法としてベトナム事前教示制度
概要の紹介

東京共同会計事務所

 今回は、ベトナムへの製品輸出時の関税リスクの軽減方法の一つを参考として述べたいと思います。関税リスクとは、例えば、通関の事後調査によりHSコードの分類又は原産地の間違い、申告した関税評価額が妥当ではないことなどが税関当局(customs authorities)から指摘され追徴課税処分を受けるようなリスクが想定されます。追徴課税処分を受けた場合、原則として本税に加えて過少申告税額が20%、および延滞税が一日に当たり0.03%課されます。このような指摘を受け、実際に追徴課税処分を受けたケースが現地で報道されることも見受けられます。

 これらのリスクを軽減する方法の一つとして、ベトナムの事前教示制度の活用が挙げられます。以前はこの制度が十分に機能していないとの企業からの声もありましたが、徐々に改善され、現在では活用する企業が増えてきています。

 「事前教示制度」とは、関税法に基づき、税関申告者(customs declarant)が輸入予定の貨物について(i)HSコード分類、(ii)原産地、(iii)関税評価額を事前に確認したい場合に税関当局に関連情報・証拠、輸入予定のサンプル等を提出し、税関当局の書面による事前確認を得るものです。

 以下に、本制度の概要をまとめます。

‐税関申告者は、輸入予定日の60日前までに、税関総局(General Department of Customs)に事前教示制度に基づく申請書類を提出する必要があります。また事前教示の対象貨物に変更がある場合には、変更の発生後10営業日以内に税関総局に報告しなければなりません。

‐税関総局は、条件を満たさないなどの理由により申請を否認する場合には、申請書類を受領してから5営業日以内に書面によりその旨を回答します。そして、申請書類一式を受理してから30日以内(調査が必要なケースであれば60日以内)に結果を記載した書面を発行することとなります。書面の事前教示通知書は税関申告者に送付すると同時に関税当局のデータベースに登録され、関税総局のウェブサイトに掲載すると定められています。

‐申請に当たっては、申請内容確認のための申請書、技術書類(成分・構成分析表、カタログ, 商品写真)、サンプル(サンプルがある場合のみ)、製造コスト・製造工程に関する書類、売買契約書のコピー等を提出することが原則ですが、申請内容(HSコード分類、原産地、関税評価額)によって異なります。(詳細なガイダンスは2018年4月20日付の通達No. 39/2018/TT-BTCおよび2023年5月31日付の通達No. 33/2023/TT-BTCで確認できます。)

‐税関総局が発行した公文書(「事前教示結果の通知書」)は3年間有効で、実際の通関時に法的な根拠資料として使用可能です。

 税関総局から書面による確認を取得できるので、将来の追徴課税のリスクが軽減できると考えます。この手続きを効率的に活用したい場合は、輸入予定の商品に関する資料の確認・準備、ベトナムへの輸入予定日・申請の提出期限、通知書の有効期限等を考慮しながら進めることが望まれます。なお、実際に輸入される製品が申請書で説明した製品と異なる場合、あるいは事前教示結果の根拠法が改正された場合等、発行された事前教示結果の通知書は使用不可能、あるいは失効となることがあることにもご留意ください。必要に応じて、現地の専門家と相談しながら手続きを進めることが重要です。

「寄稿」ベトナムの新労働組合法の改正点の概要

弁護士法人 瓜生・糸賀法律事務所(https://uryuitoga.com/

1. はじめに

 2013年1月1日に施行された現行労働組合法(Law No. 12/2012/QH13、以下「現行法」といいます。)に代わり、ベトナム国会は、2024年11月27日に新労働組合法(Law No. 50/2024/QH15、以下「新法」といいます。)を制定しました。新法は2025年7月1日から施行されるところ(新法第37条)、現行法からの改正点は多岐にわたります。そこで、本稿では、紙面の許す限り、新法の改正点の概要を簡単に取り上げます。

2. 改正点の概要

(1) 外国人労働者の労働組合への加入

 現行法では、外国人労働者が労働組合に加入することは認められていません(現行法第5条、ベトナム総労働組合(以下「VGCL」といいます。)の2020年2月3日付Decision No. 174/QD-TLD添付のVGCLの定款第1条第2項、同定款の施行に関するVGCLの2020年2月20日付のGuidelines No. 03/HD-TLD第3条第3.2項第a号、第3.4項第b号)。

 この点、新法では、12か月以上の有期労働契約に基づきベトナムで勤務する外国人が、基礎労働組合に加入及び活動することが可能となりました(新法第5条第2項)。
 但し、外国人労働者労働組合の役員の地位に就くことができない(新法第4条第5号)等、ベトナム人労働者に比して一定の制限が課されています。

(2) 厳禁行為の内容の明確化及び追加

 現行法は、(a)労働組合の権利行使を妨害する、又は困難を生じさせること、(b)労働組合を設立、労働組合に加入及び労働組合で活動していることを理由に、労働者に対し差別的取扱い又は不利益を生じさせる行為をすること、(c)労働組合の組織及び活動に対し不利益を生じさせる経済的措置又はその他の措置を使用すること、(d)法律に違反するために、又は国家の利益並びに機関、組織、企業及び個人の合法的権利及び利益を侵害するために、労働組合の権利を濫用すること、を厳禁行為としています(現行法第9条)。

 この点、新法では、現行法上の厳禁行為のうち、(a)(d)には変更はないものの(新法第10条第1項、第7項)、(b)については、以下の行為が含まれる旨明記し、厳禁行為の内容を一定程度明確化しました(新法第10条第2項)。

- 採用又は労働契約、業務契約の締結、更新のために、ベトナム労働組合への加入、不加入、又は脱退を要求すること
- 解雇、懲戒、労働契若しくは業務契約の一方的な解除、労働契約若しくは就業契約を継続して締結若しくは更新しない、又は労働者を他の業務に異動させること
- 賃金、賞与、福利厚生、労働時間、その他労働に関する権利及び義務に関する差別的取扱いをすること
- 蔑視、性別・民族・宗教・信仰に関する差別的取扱い、又は労働におけるその他差別的取扱いをすること
- 労働組合幹部の威信及び名誉を貶めることを目的とした虚偽の情報
- 労働者又は労働組合幹部が組合活動に参加しないようにする、労働組合幹部を辞任させる、又は労働組合に反対する行為を行わせるために、物質的又は非物質的な利益を約束又は提供すること
- 労働組合活動を弱体化させるために、業務に関連する支配、妨害、又は困難を引き起こすこと
- その他法律で定める行為

 また、(c)については、労働組合組織に対し不利益を生じさせる、経済的措置、精神的脅迫若しくはその他の手段を使用すること、労働組合の設立、活動の過程に干渉、操作すること、又は労働組合の機能・任務・権利・責任を弱体化若しくは無効化すること、との内容に変更されました(新法第10条第3項)。

 さらに、厳禁行為として新たに、①法律の規定に従った労働組合の活動及び労働組合の幹部条件を確保していないこと、②労働組合経費を納付しないこと、労働組合経費を遅滞して納付すること、③規定する金額どおりに労働組合経費を納付しないこと、納付しなければならない対象に属する人数分十分に労働組合経費を納付しないこと、又は規定どおりに労働組合経費を管理、使用しないこと、④法律の規定に反する援助、後援、技術支援を受けること、⑤労働組合の組織及び活動に関する虚偽、挑発的、歪曲的、又は中傷的な情報、が追加されました(新法第10条第4項、第5項、第6項、第8項)。

 上記で新たに追加された厳禁行為の一部は、現行法上は厳禁行為とはなっていなかったものの、罰則議定において行政違反行為として罰金等の対象となっていたものもあります(例えば、上記③についてはDecree No. 12/2022/ND-CP第38条参照)。この点、新法で明確に厳禁行為と規定されることにより、今後は国家機関による監視や取り締まりが一層強化される可能性があることにはご留意ください。

(3) 労働組合経費の免除、減額、納付の一時停止に関する規定の新設

 労働組合の財源は、労働組合員が納付する労働組合費、企業等が納付する労働組合経費(労働者のために納付する強制社会保険を基にした2%の額)及びびその他の収入により構成され、この点は現行法、新法で変更はありません(現行法第26条、新法第29条)。
 新法では、企業等が納付する労働組合経費の免除、減額、納付の一時停止に関する規定が新設されました(新法第30条)。

 具体的には、企業等が解散又は破産を実施する場合には労働組合経費の免除が、企業等が経済的理由又は不可抗力による困難に陥る場合には労働組合経費の減額が、企業等が困難に陥り、一時的に生産、営業を停止せざるを得なくなり、労働組合経費を納付する能力がない場合には、12ヶ月を超えない範囲で労働組合経費の納付の一時停止が、検討されるとの旨の規定が追加されました。この詳細については、政府がVGCLと合意の上、規定することになっており、その動向には、引き続き注視が必要と思われます。

3. 終わりに

 上記の改正点のほか、新法では、労働組合による、使用者、機関、組織に対する監督活動に関する規定(新法第16条)、労働組合が労働組合員及び労働者等に関係する法律文書の草案等について意見等を表明する権利を有することに関する規定(新法第17条)等が追加されている等の改正点があります。今後政府により詳細が規定されていることが予定されている箇所もあるため、皆様がベトナムに進出し事業運営する際には、ベトナムでの最新の実務状況を十分に把握することが望ましいといえます。

お問い合わせ

東京共同会計事務所 事業開発企画室 グローバルタックスチーム ベトナムデスク

ヴ ティ フオン リン(ベトナム国税理士)
TEL:81-3-5219-8890
URL:https://international-tax.jp/services/#vietnam
MAIL:vuthiphuong-linh@tkao.com
PDFデータ:TKAO Vietnam Newsletter 20250619

本ニュースレターに記載されている情報は一般的なものであり、必ずしも貴社の状況に対応するものではありません。貴社において何かしらの決定をする場合は、貴社の顧問税理士等にご相談の上実行下さいますよう宜しくお願い申し上げます。

Vietnam Newsletter 2025.06.19 © 2021- 2025 Tokyo Kyodo Accounting Office 無断複製・転載を禁じます。

ページトップに戻る