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【Vietnam Newsletter】
ベトナム税務管理法の重要な改正点のアップデート/ベトナム新投資法の改正点の概要

 平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。東京共同会計事務所のベトナムデスクです。

 ベトナム進出に係る様々な税務・法務情報等を提供したいと考え、本メルマガを送らせて頂いております。

 今回のテーマは、次の通りです。

1.ベトナム税務管理法の重要な改正点のアップデート
2.ベトナム新投資法の改正点の概要 

 なお、各コラムは執筆者により「寄稿」されたものであり、その文責は執筆されたコラムに限定されています。

ベトナム税務管理法の重要な改正点のアップデート

東京共同会計事務所

 ベトナム国会は2025年12月10日に税務管理法No.108/2025/QH15を公布し、2026年7月1日以降(一定の条項を除き)発効されます。本稿では本改正法の重要なポイントをアップデート致します。

1.納税者のグループ分けによる税務管理の効率化

 税務当局は、税務管理の観点および税務当局の管理資源配分を考慮し、納税者を一定の基準(例えば、事業活動の特徴、法的形式、資本構成、事業規模、売上高、納税金額、過去の税務法律の順守の履歴等)によりグループに分けし、各グループに適切な税務管理措置を適用して監督を強化します。

2.自動的な還付および減免税の仕組みの導入

 税務当局は、データベース、リスク管理基準、自動処理プロセスおよび情報セキュリティに基づき、還付および減免税の手続きを自動的に行う仕組みを導入します。その運用は、実際状況、インフラ整備の状況等に合わせて、段階的に実施される予定です。詳細な手続きについては、今後、財務省よりガイダンスが公布されます。

3.修正申告期限の短縮

すでに税務当局に提出された税務申告書類に誤り等を発見した場合、当該税務申告書の提出期限から5年以内(現行法では10年以内)に修正申告を行うことができます。なお、修正申告が可能なケースは、例えば、以下の様な場合に限られます。


 ①税務当局が税務調査・検査の決定通知を発行する前であること
 ②修正申告の内容が、過去の税務調査の決定通知に含まれていなかった調査内容であること等

4. 電子商取引を行う外国法人・個人に対するベトナムでの税務義務の補足

 電子商取引のプラットフォーム経由で事業を行う外国法人・個人が原則として、直接あるいは委任によりベトナムで税務申告・納税することとなります。

5.株式譲渡等に関する申告・納税義務の明確化

 外国法人・非居住者(以下「外国法人等」)が直接または間接的に保有するベトナム法人の株式等を譲渡する場合、その譲受人であるベトナム法人等が譲渡人である外国法人等の代わりに申告・源泉納税を行う義務があることとされました。また、譲渡人と譲受人の双方とも外国法人等の場合は、譲渡対象であるベトナム法人がその譲渡人に代わり申告・納税する義務があることとされました。

 この規定は株式等の譲渡所得課税の徴収を強化する一方で譲渡人に代わり申告・納税する現地ベトナム会社の義務の履行については、実務上は難しくなる可能性があります。

6. 国際税務に関する規定

国際税務に関連しては、下記のことが明確にされました。


 (ⅰ)関連者間取引に関わる移転価格の調査:調査期間は40日以内とし、必要な場合には40日を上限とし
   て一回に限り延長が可能となります。また、外国税務当局との情報交換・情報収集が必要な場合には
   調査期間が延長できますが、2年を超えないようにすると定めています。


 (ⅱ)自由貿易協定(FTA/EPA):引き続き積極的に新規FTA/EPAの交渉・締結をしながら、既存の
   FTA/EPAを円滑に実施することとされています。


 (ⅲ)租税条約(DTA)およびDTA上の相互協議(MAP)、事前確認(APA):租税条約の適用を円滑
   に実施するために、申請書類の処理方法、租税条約の解釈等のガイダンスが提供されます。特に
   DTA上のMAP(※1)とAPA(※2)に関して「実施原則」を定めます。例えば、MAPの下で合
   意・署名されたすべての内容は当該租税条約に基づき実施されることとなります。また、APAの決定
   権限は財務大臣の規則に従い税務局長が実施することとなります。
  (※1)MAPとは、租税条約に基づき、ベトナムと相手国の税務当局間で二重課税の解消等について協議し、二重課税を回
     避するための書面による合意です。
  (※2)APAとは、税務当局と納税者、または税務当局間(二国間APAあるいは多国間APA)との間で締結される書面によ

    る合意であり、関連者間取引価格を独立者間取引の原則に基づき事前に決定することを目的とするものです。


 (ⅳ)その他、グローバル・ミニマム課税に関する規則の実施、および税務上の透明性と情報交換に関す
   る国際的な基準の実施を推進しているグローバル・フォーラム(Global Forum on Transparency
   and Information Exchange for tax purposes)の基準に基づき海外機関等から情報収集・情報確認
   を実施することなどを規定しています。


 ベトナム税務管理法改正の上記のポイントから見ると、ベトナム政府は積極的に国際間取引に関する国際課税の動向を政策に反映しようとしていると考えられます。外国からの投資がベトナム国内の経済発展に欠かせない要素の一つであるため、このような改正により透明性を高め課税に関するルールを明確にすることで、外国投資家にとって投資環境を改善していくことが期待されています。


 本ニュースレターに記載されている情報は一般的なものであり、必ずしも貴社の状況に対応するものではありません。貴社において何かしらの決定をする場合は、貴社の顧問税理士等にご相談の上実行くださいますよう宜しくお願い申し上げます。
 

「寄稿」ベトナム新投資法の改正点の概要

弁護士法人 瓜生・糸賀法律事務所(https://uryuitoga.com/

1. はじめに

 新投資法(Law No. 143/2025/QH15、以下「新法」といいます。)が、2025年12月11日に制定されました。

 新法の施行日は規定毎に異なり、①鉄道法を改正又は補充する規定は2026年1月1日から、②条件付投資経営事業分野に関する第7条及び別紙IVは2026年7月1日から、③その他の規定は2026年3月1日から施行となっています(新法第51条第1項ないし第3項)。

 そして、これに伴い従前の投資法(Law No. 61/2020/QH14(その後の法令(※1)により修正補充)、以下「旧法」といいます。)は、上記②に対応する旧法の規定を除いて(同規定は2026年7月1日失効予定です。)、失効しました(新法第51条第4項)。

 また、本稿執筆時点において、新法の詳細を規定した下位法令は制定等されていません。

 例えば、新法の施行細則議定である、「投資法のいくつかの条項の詳細を規定し、施行を案内する議定」についても、2026年2月2日付の第2版草案(以下「施行細則草案」)が公表等されたに過ぎない状況にあります(※2)。その結果、当局側の対応にも一定の混乱が生じています。

 旧法からの改正点は多岐に亘るところ、本稿では、紙面の許す限り、新法の改正点の概要を簡単に取り上げると共に、当局側の対応の混乱についても簡単に言及します。

2. 改正点の概要

(1)投資登録証明書と企業登録証明書の取得手順の変更

 新法では、投資登録証明書(IRC)(※3)と企業登録証明書(ERC)(※4)の取得手順が変更されました。

 まず、旧法では、外国投資家(外国企業・外国人)が、ベトナムで企業を設立するには、一定の場合を除き、まずIRCの取得手続を行い、IRCを取得した上で、企業法(※5)に基づいてERCを取得する必要がありました(旧法第22条第1項第c号)。

 このIRCの取得には一定の時間を要するため(法文上は、当局が適法な申請書類を受領してから10日以内に発給されることになっていましたが(Decree 31(※6)第36条第3項)、実務上、それよりも多くの時間を要することも多く(2-3か月又はそれ以上に掛かることもあり得ます。))、一定の不都合(例えば、企業設立後に向けた人材の確保での不都合等)が生じる場合もありました。

 この点、新法では、「外国投資家は、投資登録証明書の発給、調整手続を実施する前に、投資プロジェクトを実施する経済組織を設立することができ、また、経済組織設立手続を実施するときに、本法第8条に規定する外国投資家に対する市場アクセス条件を充足しなければならない。」と規定しています(新法第19条第2項)。

 この規定及び新法の他の規定上、(A)ERCを先に取得して、 IRCを取得するという手順のみが認められているのか、あるいは、(B)ERCを先に取得して、IRCを取得するという手順のほか、旧法と同様に、IRCを先に取得して、ERCを取得するという手順も可能なのかについては必ずしも判然としません(施行細則草案上も判然としません。)。

 そこで、ハノイ市、ホーチミン市、ダナン市の財政局に対するヒアリングを実施したところ、ホーチミン市、ダナン市の財政局からは回答を拒否されましたが、ハノイ市財政局からは、(B)の解釈である、即ち、外国投資家は、何れにするか選択することが可能であるとの回答がありました。

 また、2025年10月25日に実施されたホーチミン市弁護士会主催の新法等に関する研修においても、(B)の解釈であるとの説明がなされていたとの情報もあります。

 そうすると、(B)の解釈であるということになりそうだと、一応思われますが、当局の担当者により判断が分かれる可能性は否定できず、ベトナムでの企業設立を行うに当たっては、事前に申請先となる当局に確認の上進めるのが安全なように思われますし、今後の動向には注視する必要があると思われます。

(2)条件付投資経営事業分野の削減等(2026年7月1日から施行)

 新法では、旧法に比して、条件付投資経営事業分野のリストから、税務手続代行サービス事業、雇用サービス事業、労働者派遣サービス事業等の39事業を除外し、総数が、237事業から198事業へと削減されました(旧法第7条第1項、別紙IV、新法第7条第1項、別紙IV)。

 ここで、条件付投資経営事業分野とは、ベトナム国内投資家及び外国投資家を問わず、当該事業の実施に当たって一定の要件の充足、許可証の取得等の条件が付されているもので、今回除外された事業については、今後、当該規定の施行日(2026年7月1日)に向け、関連法令の改正等が行われるものと思われます。

(3)外国人投資家に対する市場アクセス制限付分野

 他方、外国投資家に対する市場アクセス条件が設定されている事業分野に関する、外国人投資家に対する市場アクセス制限付分野については、旧法と新法の下で実質的な変更がないように思われます。即ち、旧法に基づく外国人投資家に対する市場アクセス制限付分野は、Decree 31の別紙Iに規定されているところ、施行細則草案の別紙Iではほぼ変更はありません。

 勿論、実際に制定される場合には、内容が異なっている可能性はあるものの、施行細則草案の内容を踏まえる限り、基本的には、外国人投資家に対する市場アクセス制限付分野に関しては、旧法と新法で特段の違いは生じないのではないかと想像されます。

3.当局側の対応の混乱

 新法が施行されたものの、新法の詳細を規定した下位法令は制定等されていない状況のため、当局側においても一定の混乱が生じています。

 例えば、ハイフォン市財政局は、2026年3月2日に、ハイフォン市公共行政サービスセンター宛に、投資登録に関する行政手続書類受理の一時停止に関する公文書(No. 1623/STC-KTDN)を発出し、概要、下位法令が制定されるまで、投資法関連の手続書類の受理を一時停止するとしました。

 上記のような混乱を踏まえてか、その後、財政省は、2026年3月4日に、各省、中央直轄市の人民委員会、財政局等宛に、新法の施行の実施に関する公文書(No. 2519/BTC-PC)を発出し、概要、新法の規定に適合する範囲において、旧法に基づく下位法令に従い、引き続き申請書類の受理及び処理を行うよう要請する事態となり、一応、混乱は解決されたようには見えます。

 但し、実際には、“新法の規定に適合する範囲”が不明確であるため、新法の下位法令が制定等されるまでは、当局の担当者が万が一の場合に責任を負うこと等を恐れて、何らかの理由を付けて、申請書類の受理を拒否する等の事態が発生する可能性も相応にあるようには思われます。

4.終わりに

 上記2の改正点に加えて、新法では、例えば、工業団地、輸出加工区、ハイテクパーク、集中型デジタルテクノロジーパーク、自由貿易区、国際金融センター、又は経済特区内の機能区における投資プロジェクトに対する特別投資手続が新設される(新法第28条)等、多数の改正点があることにはご留意ください。

 また、上記1のとおり、新法の詳細を規定した下位法令は制定等されておらず、上記3のとおり、当局側の対応に混乱が生じていること等から、これらの下位法令の最新状況含めた今後の動向についても引き続き注視するのが望ましいと思われます。

※1.具体的には、旧法は、Law No. 72/2020/QH14、Law No. 03/2022/QH15、Law No. 05/2022/QH15、Law No. 08/2022/QH15、Law No. 09/2022/QH15、Law No. 20/2023/QH15、Law No. 26/2023/QH15、Law No. 27/2023/QH15、Law No. 28/2023/QH15、Law No. 31/2024/QH15、Law No. 33/2024/QH15、Law No. 43/2024/QH15、Law No. 57/2024/QH15、Law No. 90/2025/QH15により修正補充されています。
※2.https://www.moj.gov.vn/qt/tintuc/Pages/chi-dao-dieu-hanh.aspx?ItemID=5896
※3.投資登録証明書(IRC)とは、投資プロジェクトに関する投資家の登録情報を記録した紙又は電子での文書をいいます(旧法第3条第11号、新法第3条第11号)。
※4.企業登録証明書(ERC)とは、企業登録に関する情報を記録した紙又は電子での文書であり、経営登録期間が企業に対し発給するものをいいます(企業法第4条第15号)。
※5.企業法:Law No. 59/2020/QH14(Law No. 03/2022/QH15、Law No. 76/2025/QH15により修正補充)
※6.Decree 31:Decree No. 31/2021/ND-CP(Decree No. 35/2022/ND-CP、Decree No. 10/2024/ND-CP、Decree No. 23/2024/ND-CP、Decree No. 115/2024/ND-CP、Decree No. 19/2025/ND-CP、Decree No. 97/2025/ND-CP、Decree No. 163/2025/ND-CP、Decree No. 165/2025/ND-CP、Decree No. 168/2025/ND-CP、Decree No. 239/2025/ND-CPにより修正補充)。

お問い合わせ

東京共同会計事務所 事業開発企画室 グローバルタックスチーム ベトナムデスク

ヴ ティ フオン リン(ベトナム国税理士)
TEL:+81-80-3581-4820
URL:https://international-tax.jp/services/#vietnam
MAIL:vuthiphuong-linh@tkao.com
PDFデータ:TKAO Vietnam Newsletter 20260326

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