外国税額控除における外国法人税の「納付することとなる」の意義

  • 国際税務・国際ビジネス
外国税額控除における外国法人税の「納付することとなる」の意義

 内国法人や居住者の国際的二重課税を排除する方法として、全世界所得を課税対象とした上で、外国で課された税を法人税額または所得税額から控除する全世界所得課税+外国税額控除方式と国外所得に対する課税は免除するという国外所得課税免除方式の二つの方法があります。

 わが国は、前者の方法を原則として(法人税法69条、所得税法95条)、部分的に国外所得課税免除方式を採用しています(例えば、法人税法23条の2の外国子会社配当益金不算入制度)。外国税額控除を適用する場合に、外国税が外国税額控除の対象となる外国法人税に該当するのか、外国税額控除を適用する時期が正しいかをよく確認する必要があります。

 以下法人税法69条にもとづいて、外国税額控除の概要、外国税額控除の対象となる外国税および外国税額控除を適用する時期について解説します。

目次

外国税額控除の概要

 法人税法69条1項は、以下のように規定しています。

「内国法人が各事業年度において外国法人税・・・を納付することとなる場合には、当該事業年度の所得の金額につき・・・各事業年度の所得に対する法人税の税率の規定を適用して計算した金額のうち当該事業年度の国外所得金額・・・に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額・・・を限度として、その外国法人税の額・・・を当該事業年度の所得に対する法人税の額から控除する。」

 すなわち、外国法人税は、以下の控除限度額の範囲内で法人税の額から控除されます。

 調整国外所得金額とは、「国外所得金額から外国法人税が課されない国外源泉所得に係る所得の金額を控除した金額をいう。」(法令142③)とされており、国外所得から非課税所得を控除した金額になります。

 国外所得とは、法人税法69条4項1号から16号までに列挙されている以下の所得をいい、国外事業所等帰属国外所得(1号)とその他の国外所得(2号から16号)に分けて計算することとされています(法令141の2)。

① 国外事業所等に帰せられるべき所得

② 国外にある資産の運用又は保有により生ずる所得

③ 国外にある資産の譲渡により生ずる所得として政令で定めるもの

④ 国外において人的役務の提供を主たる内容とする事業の対価

⑤ 国外にある不動産、国外にある不動産の上に存する権利、国外における採石権の貸付
  け、国外における租鉱権の設定、非居住者若しくは外国法人に対する船舶若しくは航
  空機の貸付けによる対価

⑥ 利子等及びこれに相当するもの

⑦ 配当等及びこれに相当するもの

⑧ 国外において業務を行う者に対する貸付金で当該業務に係るものの利子

⑨ 国外において業務を行う者から受ける次に掲げる使用料又は対価で当該業務に係る
  もの

⑩ 国外において行う事業の広告宣伝のための賞金

⑪ 国外にある営業所又は国外において契約の締結の代理をする者を通じて締結した保険
  契約その他の年金に係る契約に基づいて受ける年金

⑫ 給付補塡金、利息、利益又は差益

⑬ 国外において事業を行う者に対する出資につき、匿名組合契約(これに準ずる契約と
  して政令で定めるものを含む。)に基づいて受ける利益の分配

⑭ 国内及び国外にわたって船舶又は航空機による運送の事業を行うことにより生ずる所
  得のうち国外において行う業務につき生ずべき所得

⑮ 租税条約の規定により相手国等において租税を課することができることとされる所得

⑯ その源泉が国外にある所得

外国法人税

 外国法人税とは、外国の法令に基づき外国又はその地方公共団体により法人の所得を課税標準として課される税(法法69①、法令141①)をいいます。

 また、以下の税は外国法人税に含まれるものとされます(法令141②)。

① 超過利潤税その他法人の所得の特定の部分を課税標準として課される税

② 法人の所得又はその特定の部分を課税標準として課される税の附加税

③ 法人の所得を課税標準として課される税と同一の税目に属する税で、法人の特定の所
  得につき、徴税上の便宜のため、所得に代えて収入金額その他これに準ずるものを課
  税標準として課されるもの

④ 法人の特定の所得につき、所得を課税標準とする税に代え、法人の収入金額その他
  これに準ずるものを課税標準として課される税
  逆に以下の税は外国法人税に含まれないものとされています(法令141③)。
  ① 税を納付する者が、当該税の納付後、任意にその金額の全部または一部の還付を
    請求することができる税
  ② 税の納付が猶予される期間を、その税の納付をすることとなる者が任意に定める
    ことができる税
  ③ 複数の税率の中から税の納付をすることとなる者と外国もしくはその地方公共団
    体またはこれらの者により税率の合意をする権限を付与された者との合意により
    税率が決定された税
  ④ 外国における各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税に相当する税
    (外国におけるグローバル・ミニマム・タックス制度であるいわゆるIIR:
    Income Inclusion Rule、及びUTPR:Under-Taxed Profit Ruleに係る税を
    指す)
  ⑤ わが国以外の国・地域の租税に関する法令において、その国・地域を所在地国と
    する特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等に対して課される税
  ⑥外国法人税に附帯して課される附帯税に相当する税その他これに類する税

⑤ 自国内最低課税額に係る税
  (外国におけるグローバル・ミニマム・タックス制度であるいわゆる
  QDMTT:Qualified Domestic Minimum Top-up Taxに係る税を指す)

控除対象外国法人税の額

 外国税が外国法人税に該当したとしても、すべて外国税額控除の対象になるわけではなく、以下の外国法人税は、国際的二重課税の排除を目的とする外国税額控除制度の趣旨などを理由として、外国税額控除の対象にならず、外国法人税の額からこれらの額を除いた控除対象外国法人税の額が外国税額控除の対象になります(法法69①第4括弧書き)。

① 所得に対する負担が高率な部分として政令で定める外国法人税の額
  概ね法人税率35%を超える部分(法令142の 2①)、利子等に対する源泉税率が10%を
  超える部分(法令142の 2②)をいいます。

② 内国法人の通常行われる取引と認められないものとして政令で定める取引に基因して
  生じた所得に対して課される外国法人税の額
  例えば、内国法人が、内国法人が金銭の借入れをしている者または預入を受けている
  者と特殊の関係のある者に対し、その借り入れられ、または預入を受けた金銭の額に
  相当する額の金銭の貸付けをする取引で、貸付けに係る利率その他の条件が、その借
  入れ又は預入に係る利率その他の条件に比し、特に有利な条件であると認められる場
  合が含まれます(法令142の 2⑤一)。
  これは、控除限度額に余裕のある内国法人の余裕枠を利用して(外国税額控除を濫用
  して)、利ざやを稼ぐスキームが争いになった事件(注1)を封ずる立法措置として設
  けられたものです。

③ 内国法人の法人税に関する法令の規定により法人税が課されないこととなる金額を課
  税標準として外国法人税に関する法令により課されるものとして政令で定める外国法
  人税の額
  みなし配当事由により交付を受ける金銭の額および金銭以外の資産の価額に対して課
  される外国法人税の額(法令142の 2⑦一)、外国子会社配当益金不算入制度の適用を
  受ける剰余金の配当等の額にかかる外国法人税の額(同項三)、国外事業所等からの
  送金について、支払に係る金額を課税標準として課される外国法人税の額(同項
  四)、相互協議の結果としてわが国において法人の所得が減額されることとなる場合
  に、相手国居住者等に返金しないことについて、相手国でみなし配当課税等を行う場
  合の外国法人税の額(同項二)(注2)等が含まれます。

④ その他政令で定める外国法人税の額
  租税条約を締結している相手国において租税条約の減免規定を超えて課される外国法
  人税の金額(法令142の 2⑧五)(注3)、タックスヘイブン対策税制における外国関
  係会社から受ける剰余金の配当等で益金不算入とされるものを課税標準として課され
  る外国法人税の額等(法令142の 2⑧一、二)が含まれます。

注 1 りそな銀行事件 最判平成17年12月19日(民集59巻10号2964、TainzコードZ255-10240)
注2 移転価格課税における第二次調整にかかる外国法人税の額が該当します。移転価格課税における第二次調整とは、独立企業間価格と実際の取引価格が異なる場合、差額が返還されないことをみなし
  配当等と扱い課税することをいいます。わが国では導入されていませんが、第二次調整を行う規定を導入している国もあります。
注3  国税庁質疑応答事例 租税条約に定める限度税率を超える外国法人税の額の取扱い

納付すべき外国法人税の額

 外国税額控除の対象となる外国税は、控除対象外国法人税に限定されますが、さらに「納付することとなる」という要件が付加されます。「納付することとなる」となるとは、外国法人税にかかる租税債務が確定することを意味すると解され、裁判例(注4)においても以下のように判示されています。

 「外国税額控除が認められるのは控除対象たる法人税額の基礎となる所得が帰属する事業年度において外国の法人税を納付することとなる場合に限定されることが,法律上も明らかになっており,この定めは,当該事業年度において外国の法人税に係る租税債務が確定していることを前提にしているものと解することができる。」

  法人税法第69条25項は、確定申告書等に控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細を記載した書類、控除対象外国法人税の額の計算に関する明細その他の財務省令で定める事項を記載した書類を添付し、控除対象外国法人税の額を課されたことを証する書類その他の財務省令で定める書類(注5)を保存している場合に限り外国税額控除の適用があるものとしています。そして、控除対象外国法人税の額を課されたことを証する書類は、これらの書類がいずれも納付すべき租税債務が確定しない限り入手できないものであるから、外国法人税に係る租税債務の確定を待って外国税額控除制度を適用すべきであるという考え方を採っているとされています。なお、以前はこれらの書類添付が当初申告において要求され、事後的に外国税額控除を適用することが不可能とされていましたが、平成23年度税制改正により平成23年12月2日以後に申告期限が到来する法人税申告から当初申告要件が撤廃されたため、現在では更正の請求による適用も可能となっている点に注意が必要です。

 注4 東京高判平成28年7月14日(税資266号順号12881、TainzコードZ266-12881)
注5 控除対象外国法人税の額を課されたことを証する書類その他の財務省令で定める書類は、申告書の写、これに代わるべき当該税に係る書類、当該税が既に納付されている場合にはその納付を証する書類、当該税が控除対象外国法人税の額に該当する旨、控除対象外国法人税の額を課されたことを証する書類とされています(法規29の4②一)。より具体的には、申告書の写し、現地の税務官署が発行する納税証明書等、更正若しくは決定に係る通知書、賦課決定通知書、納税告知書、源泉徴収の外国法人税に係る源泉徴収票その他これらに準ずる書類、書類の写しが含まれるとされています(法基通16-3-48)。

おわりに

 外国税額控除の適用にあたって、適用しようとする外国税が控除対象外国税額に該当するか、租税債務が確定しているかを保存が求められている書類にもとづき、現地税法の規定を参照して確認することが必要です。法人所得税について多くの国では申告納税方式を採用していると思われますが、賦課決定方式を採っている国(例えばシンガポール)もあるため注意が必要です。

東京共同グループの一員である東京共同会計事務所/株式会社東京共同ホールディングスでは国際税務・外国税務に関する専門家が在籍し、海外での事業展開に伴う進出支援にも力を入れており、現地の会計事務所と連携した幅広い会計・税務のアドバイザリーサービスを提供しています。海外進出や国際取引においてお困りごとがある企業様はぜひお気軽にご相談ください。

 なお、本稿の内容は執筆者の個人的見解であり、当事務所の公式見解ではありません。記載内容の妥当性は法令等の改正により変化することがあります。
 本稿は具体的なアドバイスの提供を目的とするものではありません。個別事案の検討・推進に際しては、適切な専門家にご相談下さいますようお願い申し上げます。
 ©2026 東京共同会計事務所 無断複製・転載を禁じます。

執筆者

  • 石塚 洋一

    東京共同会計事務所 シニアアドバイザー
    公認会計士
    税理士

    監査法人にて監査業務を経験後、税理士法人にて税務コンプライアンス、税務アドバイザリー業務に従事。特に国際税務の分野で、多国籍企業の税務ガバナンス、税務調査対応と税務争訟、移転価格における調査対応・相互協議、事前確認、国際取引についての税務アドバイス業務を専門とする。また、大学発スタートアップ企業等の監査役、会計専門職大学の租税法担当教員の経験を有する。

関連コンテンツ

ページトップに戻る