親会社に加えて子会社が保有する銀行口座の現状把握をするということは、比例して情報取得コストや管理業務の負荷が増加するものです。本稿では銀行口座構成の考え方をお話しています。
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本稿の執筆者は本文中で言及される活動・サービスに関与している立場であり、
その関係性を開示いたします。本稿は執筆者の実体験および個人的見解に基づく内容であり、サービスのPRを趣旨としたコラムとなります。
以前のコラムで「銀行口座構成の重要性」をご説明しましたが、コラム執筆のきっかけは米国で資金の集中管理を行うために工夫したことでした。すべて自動化して最後の帳尻合わせを本社あるいはその後設立した金融子会社で行うという考え方です。本稿ではその事例をもとに銀行口座構成の考え方を解説いたします。
私が前職において80年代に勤務した米国子会社は通信事業を行う子会社でした。活動拠点が各地に分散しており、それまでは毎週1回依頼を受けた必要な資金を各事業部のローカル口座に送金する方法で対応していました。そのため、ローカル口座には常に余剰資金が支払いに備えて残高として残ることになります。ニューヨーク本社での銀行取引は、日本と同様親密度合いによって取引を配分することが行われていました。しかし、米国では当時のボルカー連銀議長による引き締めで短期金利が大幅に上昇したため短期プライムレートが20%を超える状況になり、そうなると、お金の無駄を省く思い切った対策を取ることが必要になりました。
「危機こそ改革のチャンス」です。高金利でなければ金融機関も改革を受け入れるのが難しかったかもしれません。改革にあたり、以下の取り組みを行いました。
まず、貿易取引については、それまで日系銀行に配分していたLC(信用状)取引条件から、2行取引、月2回の確定支払日のDA(信用状なし)取引条件に変更することとし、大幅に資金カバーを少なくすることで無駄な残高を置かないよう努めました。
続いて日常の資金カバーを自動化するために、マスター口座を当時のチェース・マンハッタン銀行(現在JPモルガン銀行)に置き、入金はすべて事業部ごとに設置した「ロックボックス(Lock Box)」という銀行の保有する私書箱に送ってもらい、逆に支払も事業部ごとに設置した「支払管理口座(Controlled Disbursement Account)」から支払われる仕組みを構築。マスター口座に集中口座の機能を持たせ、入金は自動的に集中し、支払は自動的にカバーすることで、各事業部の口座はすべてゼロバランス口座
(Zero Balance Account)としました。
つまり、マスター口座以外は基本的にはゼロバランス口座ですべてのお金の動きはマスター口座に集中して表れることになり、マスター口座の残高見込みが不足すれば調達、余剰となれば運用すればよいというロジックです。
多数の口座を並行して管理することは大変ですが集中口座と機能口座(具体的には入金口座、支払口座、貿易決済口座など機能別に口座を設置して集中口座と一方通行の送金が発生する)に役割を分ければ自動的に資金繰りが一目でわかります。この方法を「資金の見える化」と言いますが、その目的を「残高を知ること」だけに限定しないことが重要です。
また、情報を取得するためにはコストがかかります。すべての口座情報を取得するためには大変なコストがかかりますが、この場合にはマスター口座の情報をとることで、当日の収支項目の動きがすべて分かり、累積すると当月の進捗状況が分かります。あとは会社の特性や過去の入金パターンのデータ、ERPの売上データからの入金予測の分析などから異常値がないかをモニタリングすれば良いだけです。入金データがデジタルデータとして蓄積されれば管理の自動化までも可能になるでしょう。
執筆者のご紹介

一般社団法人CFO協会
主任研究員
大田 研一
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