80年代に筆者が経験してきたグローバルグループ財務管理の難しさと、シェアードサービスも知識集約型のグローバルサービシーズに移行していることをお伝えします。
目次
本稿の執筆者は本文中で言及される活動・サービスに関与している立場であり、
その関係性を開示いたします。本稿は執筆者の実体験および個人的見解に基づく内容であり、サービスのPRを趣旨としたコラムとなります。
私が金融子会社を米国で設立した時に意識したことは、「経理のスタッフは各社に派遣できても財務のスタッフを派遣するには派遣先の子会社が相当の規模になっていなくては難しい」という点です。そのように考える理由として、私自身が本社財務からの海外出向の第一号であり当時の出向先だった米国通信子会社の規模が大きくなり、それまでの駐在10年超の前任者を引き継ぎ、日本人一人で対応するには大変だったという実体験がありました。
会社の成長と金融環境により海外での財務の人材が求められるタイミングが訪れることになりますが、それまでに海外での事情に疎く国内だけの視点で財務業務を経験した人材では、本社から派遣される日本人であっても、海外の財務プロフェッショナルと肩を並べて競わなくてはいけない厳しい環境にあったことを理解する必要があります。
80年代当時から財務プロフェッショナルは貴重な人材でしたが、財務の重要性を理解する人はなかなかいない状況だったように思います。実際に、当時の米国子会社4社での資金調達の状況を比べても資金調達コストは大きく異なりました。具体的には当時のプライムレートでの借入か、市場金利をベースにした借入か、さらにはいくらのスプレッドでの借入かということで大きく異なっていました。現在であれば各社から借入情報をシステムで吸い上げることで簡単に比較できる環境ですが、当時は誰が管理するのかも曖昧で、加えて各社が自主・独立して頑張ることでやる気が起きるという機運があったため、管理を嫌う空気もありました。会社によって業績の違いがあるにしても、本社からの保証や念書の差し入れがあることを考えれば大きな差があることは受け入れがたいことです。預金残高の有無を含めて、財務の目で見ると機会損失が発生していることになります。平時ではあまり差が出なくても金利の上昇時には機会損失が大きくなるということは当然予想されました。
人材が不足している状況では人材とシステムをシェアするという発想が必要になります。その観点から、米国の持株会社内ではなく、別途金融子会社を設立することにしました。これは、まさしくシェアードサービスセンター(SSC)の考え方です。帰国後に、セミナーでの講演を頼まれたときに、そのテーマが『グローバル企業のシェアードサービスセンター』だったことで、金融子会社がシェアードサービスと初めてそのコンセプトを認識したぐらいです。
現在では財務の分野だけでなく、あらゆる分野でシェアードサービス化は進み、欧米のグローバル企業ではグローバル展開を行うことから、単純作業をイメージするSSCとは呼ばずに、サービスが多様化及び高度化していることを表す「グローバルサービシーズ
(Global Services)」と呼んでいます。
グローバル展開する上ではシェアードサービスは不可欠となるケースも見られます。ある買収戦略を積極的に進める日本企業が、海外の優良企業から一部門を買収することになりましたが、買収先の一部門には管理部門はなくすべてシェアードサービスセンターからのサービス提供を受けていました。そのために、シェアードサービスを提供する準備がなかった日本企業としては一年間買収先のシェアードサービスの延長を行い、時間を買うしか選択肢がなかった状況でした。
日本企業は国内でのシェアードサービスの成功例が少なく、ましてや海外ではより事例が無いという状況ですが、海外での買収先のモニタリングや地域での危機対応に必要なプロフェッショナル人材をシェアするには拠点が必要になります。欧米企業がシンガポールに統括会社を置いていることが多いこともそうした背景があります。ポストチャイナでインドが注目を浴びていますが、日本からのモニタリングは難しいことからシンガポールに役割を任せることも必要かもしれません。日本企業が税制の優遇を受けるために統括会社の設立時に、将来の拡張を約束したものの守れず、当局との交渉で苦労されていると聞いていますが、統括会社の役割を再考すべきタイミングなのかもしれません。
執筆者のご紹介

一般社団法人CFO協会
主任研究員
大田 研一
本稿の執筆者は本文中で言及される活動・サービスに関与している立場であり、その関係性を開示いたします。本稿は執筆者の実体験および個人的見解に基づく内容であり、
サービスのPRを趣旨としたコラムとなりますが、当事務所の公式見解ではございません。また、本稿に記載されている情報は一般的なものであり、必ずしも貴社の状況に対応するものではございません。記載内容の妥当性は法令等の改正により変化することがございます。本稿は具体的なアドバイスの提供を目的とするものではございません。個別事案の検討・推進に際して、貴社において何らかの決定をする場合は、貴社の顧問税理士等、適切な専門家にご相談下さいますようお願い申し上げます。
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