【ベトナム】2025年付加価値税・法人所得税法改正、移転価格税制、外国契約者税、税務調査事例、子会社の不正防止対策等

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【ベトナム】2025年付加価値税・法人所得税法改正、移転価格税制、外国契約者税、税務調査事例、子会社の不正防止対策等

 ベトナムは、製造拠点の多様化と急成長する消費市場への参入を図る日本企業にとって、アジアで最も魅力的な外国直接投資先の一つであり続けています。
 戦略的立地、若年労働力、拡大する中間層を背景として、ベトナムは長期的なビジネス成功の可能性を秘めています。

 しかしながら、ベトナムで整備される法制・税制・コンプライアンス環境を適切に管理することは、特に海外から子会社を統括する親会社にとって、依然として重要な課題となっています。
 本稿では、ベトナム市場進出前後に日本企業が留意すべき最新の規制変更とリスク分野について概説します。

目次

2025年のベトナムにおける税制改正

 ベトナムは、外国企業のコンプライアンス義務の運営管理に影響を与える法制および税制の重要な改正を実施しています。
 主な改正は下記の通りです。

付加価値税(Value-Added Tax:VAT) – 2025年7月1日施行

ベトナム政令181号(Decree 181/2025/ND-CP)

 ベトナムの顧客に対してデジタルサービス、電子商取引またはソフトウェアを提供する外国の供給業者は、ベトナムに恒久的施設を有するか否かに関わらず、現行10%VATの対象となります。
 新VAT法においては、還付条件が厳格化され、500万ドンを超える課税仕入れ計上(仕入VAT控除の適用を受けようとする場合)については、非現金決済によるものであることが義務付けられます。
 非現金決済とは下記のものをいいます。

① 銀行振込(ドン口座間)
② クレジットカードおよびデビットカード支払い
③ 電子決済アプリ(Momo・ZaloPay・VNPayなど)
④ 株式、債券または契約に明記されたその他手段による支払い
⑤ (社内規定に基づく)従業員立替経費の会社銀行振込による精算

法人所得税(Corporate Income Tax:CIT) – 2025年10月1日施行

ベトナム改正法人所得税法67号(Law No. 67/2025/QH15)

 標準税率は20%のままとなりますが、主な改正は下記の通りです。

① 中小企業向け優遇税率(年間売上高30億ドン未満:15%、30億ドン以上500億ドン以下:17%)
② 優遇構造の転換:地理的立地ではなく、戦略的産業とプロジェクトに重点を置く

 改正CIT法においても、500万ドンを超える経費の損金算入については、非現金決済によるものであること(上記1.1. 参照)が義務付けられます。

移転価格税制および税務調査の重点項目

 ベトナム税務当局は移転価格調査措置を強化しており、重点は下記の通りです。

① 複数年にわたる赤字会社
② 経済的実体を欠くグループ内サービス料
③ 適切なベンチマークを伴わない対外ロイヤルティ・管理料支払い

 外資系企業は、ベトナム政令132号(Decree 132/2020/ND-CP)に基づき、ローカルファイル、マスターファイル、および該当する場合は国別報告書を含む、万全な移転価格文書を整備することが望ましいと考えられます。

 ベトナム政令132号の主な規定は下記の通りです。

  • 関連者取引価格の決定、納税者の義務および税務当局の責任に関する原則、方法及び手続を規定する。
  • 関連者取引(商品・サービス・貸付・保証・資産譲渡・費用分担・無形資産等)は移転価格執行のベースであり続ける。
  • 独立企業間原則(アームズレングス原則:Arm’s length principle)への準拠が必要である。
  • 納税者は移転価格文書(ローカルファイル・マスターファイル・該当する場合は国別報告書)を作成しなければならない。
    税務当局からの要請があった場合、納税者は30営業日以内に移転価格文書を提出しなければならない(1度だけ15営業日まで延長が可能)。
    ただし、小規模・低リスクの場合には免除が適用される。
    小規模・低リスクの場合とは、下記いずれかの条件を満たす場合をいう。

    ① 年間売上高が500億ドン未満であり、かつ、関連者取引総額が300億ドン
      未満である。
    ② 納税者が税務当局と移転価格事前確認(Advance Pricing Arrangemen
      t:APA)を締結し、APA年次報告書を提出している。
      APA対象外の取引については、通常の移転価格申告ルールが適用される。
    ③ 全ての関連当事者がベトナムに居住し、同一のCIT率が適用され、かつ、
      CIT優遇措置を受けていない。
    ④  ベトナム子会社が単純な機能のみを有し、無形資産の利用から生じる費
      用または収益がなく、年間売上高は2,000億ドン未満であり、かつ、純営
      業利益率(利息およびCIT控除前で、金融項目を除く。)が業種別最低率
      (流通業5%、製造業10%、受託製造・加工業15%)以上である。

  • 支払利息は純EBITDAの30%まで損金算入することができ、その超過分は一定の条件により繰越控除することができる。
  • 税務当局は調査を行い、価格および課税所得を調整することができる。
    納税者は、所定の様式を用いて関連者取引を申告しなければならない。
  • 納税者は、商用データベース(データサービスプロバイダーが収集、編集、標準化、保存、更新および提供する財務および経済情報により構成され、ユーザーが業界、地域またはその他の基準に基づいて、国内外企業の財務および経済データを検索およびアクセスし、比較可能性および移転価格算定を目的として利用することができるソフトウェアシステム)、株式市場に上場している企業の公開情報、国内外の商品およびサービス取引所が公開する情報およびデータ、ベンチマーク分析のために省庁、政府機関その他公式情報源が公開する情報を使用することが引き続き認められる。

 さらに、ベトナム政府は、2025年2月19日、政令20号(Decree 20/2025/ND-CP)を公布し、関連当事者取引を行う企業の税務執行に関する政令132号(Decree 132/2020/ND-CP)を改正しました。

 主な改正点は下記の通りです。

  • 下記条件を満たす信用機関に適用しない。
    ①借入先企業または被保証企業を直接または間接的に経営、支配または出資していない
    ②借入先企業または被保証企業が他の関連者により直接または間接的に経営、支配または資本出資されていない
  • 独立支店を関連者として含める
  • ベトナム信用機関法(Law on Credit Institutions)に基づく信用機関の子会社、支配会社および関連会社(タイプ「m」と定義される)に適用する。
  • 2020年から2023年までのEBITDAの30%の上限を超える支払利息は、翌年度以降に均等に繰り越すことができるが、連続して5年を超えることはできない。

外国契約者税(Foreign Contractor Tax:FCT)

 源泉徴収方式に基づく課税となります。
 FCTは、ベトナムに恒久的施設を有するか否かに関わらず、ベトナムにおいて物品またはサービスを提供する非居住外国事業者に適用されます。
 FCTはVATとCIT部分から構成され、契約当事者が源泉徴収することになります。

  • FCTにおけるCITは、所得の種類に応じて0.1%から10%の範囲で課税されます。
  • FCTにおけるVATは、通常2%から10%の範囲で課税されます。

 FCTには下記3つの納付方式があります。

① 申告方式

外国契約者はVATおよびCIT申告書提出を目的として、ベトナム会計基準(Vietnamese Accounting System:VAS)を完全に採用するように登録しなければなりません。
税務コンプライアンスの観点からは、VASを採用する外国契約者とベトナム国内で設立された企業との間に差異はありません。
この方式におけるFCTは下記の通り算定されます。

イ)納付VATは、売上VATから仕入VATを差し引いた額となる。
  外国契約者は仕入VAT控除を申請することができる。

ロ)納付CITは、課税所得(益金から損金を差し引いた額)に対して通常のCIT率
  (20%)で算定される。

外国契約者は、この方式を採用するために一定の条件を満たす必要があります。

② 源泉徴収方式

外国契約者は、ベトナム契約相手方が課税売上高に対するみなし税率に基づき、外国契約者に対する支払額からFCT(VATおよびCIT部分)を源泉徴収し申告する義務があるため、税務当局に直接的にFCTを納付する必要はありません。
FCTのみなしVATおよびみなしCIT税率は、提供される商品またはサービスの性質により異なります。現行規制に基づくFCTのみなしVATおよびみなしCIT税率は下記の通りです。

事業活動の種類みなし
VAT税率
みなし
CIT税率
貿易 ・商品の流通・供給
・ベトナムにおけるサービス提供に関連する商品の流通・供給(みなし輸出入通関制度(On the spot Export and Import)の形態を含む)※2
・ベトナムにおける商品に関するリスクを売主が負担するインコタームズ (Incoterms)に基づく商品の供給

※1
1%
サービス サービス5%5%
電子商取引関連サービス10%5%
レストラン・ホテル・カジノ管理サービス5%10%
機械・設備の供給を伴うサービス(契約において機械・設備とサービスの価値を分離できない場合)3%2%
保険保険5% 
または –
※3
5%
・海外における再保険
・再保険譲渡手数料
0.1%
リース機械設備のリース5%5%
航空機・航空機エンジンおよび
予備部品・船舶のリース
(航空機および船舶はベトナムにおいて
製造できないため)
2%
銀行デリバティブ金融サービス2%
貸付利子5%
資本投資有価証券・預金証書の譲渡0.1%
石油・ガス石油・ガス探査・開発のための商品またはサービスの供給10%
または
5%
5%
掘削装置のリース5%
建設材料・機械・設備の供給を伴う建設および据付3%2%
材料・機械・設備の供給を伴わない建設および据付5%2%
運輸輸送(海上・航空輸送を含む)3%
または
0%
※4
2%
ロイヤリティロイヤリティ・ライセンス料
または
5%
※5
10%
その他その他の生産活動3%2%
その他の事業活動2%2%

※1:商品のVATが免除されている場合、または輸入時にVATが納付されている場合、みなしVATは免除される。

※2:ベトナムにおけるサービス提供に関連する商品供給契約において、商品とサービスの価値を区分できない場合、契約総額に対してFCTの最高税率が適用される。

※3:特定種類の保険はみなしVATが免除される。

※4:国際輸送はみなしVAT税率0%が適用される。

※5:ソフトウェアライセンス、技術移転、知的財産権の移転だけはみなしVATが免除される。その他のロイヤリティ(著作権および工業所有権を含む知的財産権の使用権の移転等)はみなしVATの対象となる場合がある。

③ ハイブリッド方式

ハイブリッド方式は源泉徴収方式と申告方式を組み合わせたもので、外国契約者は申告方式に基づきVATを申告納付し、課税売上高に対するみなし税率に基づきCITを納付することができます。
ハイブリッド方式を採用しようとする外国契約者は、下記要件を満たさなければなりません。

イ)ベトナムに恒久的施設(Permanent Establishment:PE)を有している、または、
  ベトナムの税務上居住者である

ロ)契約に基づき182日を超える期間ベトナムにおいて事業を行う

ハ)ベトナム財務省の会計規制および指針に従い会計記録を保管する

日本とベトナム間における二重課税リスクについての留意点

 日本とベトナム間における二重課税リスクを軽減するため、企業は自社のベトナムにおける活動が、日本・ベトナム租税条約に基づく恒久的施設(Permanent Establishment:PE)に該当するか否かを慎重に評価しなければなりません。
 PE(固定的事業所、従属的代理人、長期建設プロジェクト等)が存在する場合、ベトナム政府はそれに関連する所得に対して課税する権利を有します。
 さらに、サービス対価、利子またはロイヤリティなどの支払いは、ベトナムにおいて源泉徴収税の対象となる場合がありますが、租税条約において、適切な手続きと居住者証明書が提出された場合には、軽減税率が認められています。
 日本においては、一般的に、ベトナムにおいて納付された税額について外国税額控除を認められますが、それは納税者が有効な書類を提出した場合に限られます。
 したがって、二重課税を回避するためには、企業は積極的にPEのリスクを評価し、適切なFCT方式を決定し、迅速に租税条約に基づく軽減税率を適用し、正確な書類を保管することが望まれます。

税務調査と罰則リスク

 ベトナムにおける税務調査では、基本的な書類を整備している企業であっても、追加納税が発生することがしばしばあります。
 下記に、一般的な指摘事項と最近の事例を示します。

実際の調査事例

【事例1】CITリスク低価格販売に対する移転価格調整

  • 業種
     自動車部品
  • 企業
     外資系自動車部品供給業者(以下「VN Auto社」という。)
  • 背景
     VN Auto社は、自社製品の90%を、取得原価に利益を上乗せした価格に基づき、外国親会社に輸出していた。
     2023年から2024年における税務調査において、ベトナム税務当局はVN Auto社の利益率を同業種の他の国内および周辺国企業と比較した。
  • 税務当局の指摘
    ① 利益率は比較対象企業と比べて著しく低い。
    ② 移転価格ローカルファイルに2023年に更新すべきであったベンチマーク分析が欠けている。
    ③ 納税者は低い利益率が経済的実態を反映していることを証明することができない。
  • 結果
    CITが修正され、課税所得が増加した。
    ② VN Auto社はCITの追加納付を課された。
    ③ 加算税と延滞税を課された。
  • 考察
    積極的な移転価格プランニングとベンチマーキング、特に関連当事者取引について適切な実施がなければ、外資系企業は重大な追徴課税や風評リスクに晒される可能性があります。

【事例2】VATリスク – 疑義のある仕入先からの仕入VAT控除の否認

  • 業種
     電子機器組立
  • 企業
     外資系電子機器組立業者(以下「VN Tech社」という。)
  • 背景
     VN Tech社は、組立に使用した部品について、複数の仕入先からの仕入VAT控除を申請した。
     2024年度のVAT調査において、ある仕入先(仕入先X)が2023年初頭に営業を停止していたが、その後もインボイスを発行していたことが判明した。
  • 税務当局の指摘
    ① 仕入先Xはベトナム税務総局(General Department of Taxation)のブラックリストに登録されている。
    ② VN Tech社は仕入先のデューデリジェンスを実施していない。
    ③ 商品は実際に受領されているが、インボイスは不正なものとみなされる。
  • 結果
    ① 仕入VAT控除の申請が否認された。
    ② VN Tech社は延滞税と行政処分金を課された。
  • 考察
     企業は定期的に仕入先の法的地位とコンプライアンス記録を確認しなければなりません。
     大量取引または高リスクの業者と取引する場合、下記を保存することが重要です。
    • 納品記録
    • 契約書類
    • 支払証拠
    • 入庫記録

ベトナムにおける裁判例

 ベトナムにおける最近の裁判所の判決は税務当局の決定を支持しており、下記の必要性が強調されています。

① 関連当事者取引に関する正確な文書化
② 税務処理における形式より実質優先の原則

一般的リスク要因

① 移転価格文書のない関連当事者間取引
② 矛盾するまたは口頭に基づく契約条件
③ 関連会社間支払いにおける商業上の正当事由の欠如

  • 重要ポイント
     文書化と透明性は最良の方策であるばかりではなく、調査や訴訟に対する法的防御となります。

子会社管理における内部統制および不正防止対策

  外国親会社は、特に現地の慣行が本社の基準と異なる場合、ベトナム子会社の日常業務を監視する際にしばしば困難に直面します。

最近の子会社による不正の事例

 2020年、日本のプラスチックメーカーのベトナム子会社が、納税義務を軽減するためにベトナムの税関・税務局職員に賄賂を渡していたことが報じられました。
 ベトナム当局は捜査を開始し、複数の税関・税務局職員を停職処分としました。
 その日本親会社は内部調査を開始し、ベトナム当局に協力しました。

子会社における不正の一般的類型

① 調達価格の水増しによる業者からのリベート
② 倉庫管理の不備による在庫流用
③ 会計操作および早期収益認識
④ 現金取引の多い、または分散型業務における従業員による横領

外国親会社の課題

① 言語および文化的障壁によるリアルタイム監視の制限
② 現地取締役や会計士への過度の依存
③ 不定期な内部監査および事後対応型の報告体制

推奨される内部統制

① 購買・支払・経理業務の分離
② 承認ワークフローと相互チェックの実施
③ 匿名通報を備えた内部通報制度の活用
④ 抜き打ち監査と財務健全性チェックの実施
⑤ 本社に対する日本語による月次または四半期報告体制の確立

RSM Vietnamの日本企業支援

 RSM Vietnamは、日本企業と緊密に連携して、リスクを最小化し、業務の堅実性を高めます。

ベトナム進出前

①法人設立アドバイザリー
 駐在員事務所(Representative Office)、有限責任会社(Limited Liability Company)または株式会社(Joint Stock Company)の選択
②ライセンスサポート
 投資許可および企業登録
③税制優遇措置申請
 ハイテク、研究開発その他関連産業等に対応
④雇用契約
 日本の人事慣行に沿いつつもってローカライズした労働条件の設計

ベトナム進出後

①会計および給与計算アウトソーシング
 月次報告および税務申告
②監査サービス
 定期、年末または随時監査
③不正調査
 不正調査の実施法廷会計および対応戦略
④移転価格コンプライアンス
 ベンチマーキング、文書化および税務調査対応
⑤バイリンガルコミュニケーション
 日本語・英語・ベトナム語による報告およびミーティング

RSM Vietnamのご紹介

Lam Le
Partner | Head of Tax and Consulting

本稿のお問合せ先

株式会社東京共同ホールディングス 
事業開発企画室
TEL:080-7672-4467
Email:shozo-suehiro@tkao.com

PDF: 【ベトナム】2025年付加価値税・法人所得税法改正、移転価格税制、外国契約者税、税務調査事例、子会社の不正防止対策等

本稿はRSM Vietnamから寄稿された原稿に依拠して作成しております。本稿の内容は監修者の個人的見解であり、当事務所の公式見解ではございません。本稿に記載されている情報は一般的なものであり、必ずしも貴社の状況に対応するものではございません。記載内容の妥当性は法令等の改正により変化することがございます。本稿は具体的なアドバイスの提供を目的とするものではございません。個別事案の検討・推進に際して、貴社において何かしらの決定をする場合は、貴社の顧問税理士等、適切な専門家にご相談下さいますようお願い申し上げます。

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