海外子会社の“どこまで”が日本で課税?
-実務で押さえるべきCFC税制-

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海外子会社の“どこまで”が日本で課税?<br>-実務で押さえるべきCFC税制-

 CFC税制(外国子会社合算税制/タックスヘイブン対策税制)は、税率の低い国・地域に外国子会社等を設立し、実質的な事業活動を伴わないまま所得を移すことで、日本での税負担を不当に軽減・回避することを防ぐための制度です。

 一定の要件に当てはまる外国関係会社の所得は、日本の親会社等の所得に合算して課税されます。そのため、低税率国に海外子会社を置いている場合は、日本法人の申告や税額に直接影響する可能性があります。租税回避の意図がなくても、租税負担割合や事業実体の状況によって対象となり得る点が、この制度の難しさです。

 本コラムでは、CFC税制とはどのような制度か、どのような場合に海外子会社等の所得が日本で課税されるのかという適用判定の基準と、対象となった場合の影響をわかりやすく解説します。あわせて、税務上確認されやすい典型的なケースも紹介します。

目次

CFC税制(外国子会社合算税制)の基本的な仕組み

 CFC税制は、一定の要件を満たす外国子会社の所得を、日本の親会社の所得に合算して課税する制度です。実際の判定は、次の流れで進みます。

 まず、その海外子会社が「外国関係会社」に当たるかを確認します。外国関係会社とは、日本の居住者や内国法人などが、直接・間接に株式等の50%超を保有している外国法人、または実質的に支配している外国法人をいいます。

 外国関係会社に当たる場合、さらに次の3つの類型のいずれかに分類し、それぞれ定められた「租税負担割合」を下回ると合算課税の対象になります。

 特定外国関係会社(ペーパーカンパニー等)
 租税負担割合が27%未満の場合、会社単位で計算される課税対象金額が合算対象

 対象外国関係会社(経済活動基準のいずれかを満たさない会社)
 租税負担割合が20%未満の場合、会社単位で計算される課税対象金額が合算対象

 部分対象外国関係会社(経済活動基準をすべて満たす会社)
 租税負担割合が20%未満の場合、受取配当・利子などの受動的所得のみが合算対象

 つまり、合算課税が免除される租税負担割合の基準は会社の類型によって異なり、
ペーパーカンパニー等は27%、それ以外は20%が分かれ目になります。なお、この
「27%」は令和5年度税制改正で従来の30%から引き下げられた基準で、2024年(令和6年)4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。

 以下、判定の基礎となる租税負担割合、経済活動基準(4要件)、合算対象となる所得の範囲の順に見ていきます。

租税負担割合の基準と計算方法

 租税負担割合は、外国関係会社が現地でどの程度の税負担をしているかを示す割合で、次の算式で判定します。

 租税負担割合 = 租税 ÷ 所得

 分母となる「所得」は、次のように計算します。

 外国法令により計算した所得金額 + (外国法令における)非課税所得 + 損金算入した配当 + 損金算入した外国法人税 - 益金算入還付外国法人税 + 保険準備金に係る調整額

 ここでのポイントは、外国の法令で非課税とされる所得は、配当を除いて分母に加算する点です。誤りやすいので注意してください。

 分子となる「租税」は、次のように計算します。

 外国法令に基づいて課される外国法人税 + 本店所在地国以外で課される外国法人税(源泉税等)+ 外国法令に基づく間接外国税額控除 - 非課税の国外配当等に係る源泉税

 なお、現地で政策的な税額控除を受けている場合、CFC税制上の租税はその控除後の税額で計算されるため、表面上の法定税率よりも低く算定されることがあります。

 このように、租税負担割合が20%以上である場合、通常の対象外国関係会社・部分対象外国関係会社については、原則として合算課税の対象外となります。一方、特定外国関係会社に該当する場合は、27%未満であれば会社単位合算の対象となり得ます。

合算免除の判定となる4要件

 租税負担割合に加えて、海外子会社等に事業の実体があるかどうかを「経済活動基準」で判定します。経済活動基準は、次の4つの要件で構成されます。

 事業基準
 主たる事業が、株式の保有、無形資産の提供、船舶・航空機のリースなどでないこと
 ただし、グループ統括機能を実質的に担う持株会社などは、別途検討が必要です。

 実体基準
 主たる事業に必要な事務所・店舗・工場などを本店所在地国に有していること

 管理支配基準
 本店所在地国において、自ら事業の管理・支配・運営を行っていること

 所在地国基準または非関連者基準:
 主として本店所在地国で事業を行っていること、または主な取引相手が関連者以外で
 あること

 なお、主たる事業が卸売業・銀行業・保険業・海運業などの場合は、非関連者基準が適用されますが、それ以外の業種は所在地国基準が適用されるため、経済活動基準の判定では、まず主たる事業がどの業種に当たるかの確認が必要です。

 また、管理支配基準については、税務調査において確認を求められることが多い事項ですので、株主総会・取締役会等の開催場所、事業計画の策定場所、役員の職務執行、会計帳簿の作成・保管場所その他の事情を総合的に勘案して、現地で事業の管理・支配・運営を自ら行っているかを説明できるようにしておくことが重要です。

 特定外国関係会社に該当しない外国関係会社については、この4要件をすべて満たす会社は「部分対象外国関係会社」となり、会社単位での全所得合算は免除されます。ただし、後述する受動的所得は、部分合算の対象になる場合があります。

 一方、いずれか1つでも満たさない会社は「対象外国関係会社」となり、租税負担割合が20%未満であれば、会社単位で外国関係会社の所得を基礎として、日本の税法に準じて計算した課税対象金額が合算されます。

 また、4要件とは別に、事業実体のない「ペーパーカンパニー」、受動的所得や投資性資産の割合が法定基準を超える「事実上のキャッシュ・ボックス」、財務大臣が指定した「ブラックリスト国に所在の会社」は「特定外国関係会社」とされます。特定外国関係会社に該当する場合、租税負担割合が27%未満であれば、会社単位で計算される課税対象金額が合算対象になります。

 注意したいのは、4要件は形式ではなく実態で判断される点です。形式的に事務所を借りていても、現地で実際に事業の管理・支配・運営を行っているか、必要な人員や機能を備えているか、取引実態が伴っているかなどが問われます。実体のないペーパーカンパニーは、形式上の体裁を整えていても免除の対象にならない可能性があります。

合算対象となる所得の範囲

 合算課税には、会社単位で全所得を合算する「会社単位合算」と、特定の所得だけを合算する「部分合算」の2種類があります。

 特定外国関係会社、および経済活動基準を満たさない対象外国関係会社は、会社単位で計算される課税対象金額が日本の親会社の所得に合算されます。

 一方、経済活動基準をすべて満たす部分対象外国関係会社であっても、租税負担割合が20%未満の場合は、一定の資産性所得が部分合算の対象になります。

 部分合算の対象となる代表例としては、受取配当・利子、有価証券やデリバティブに係る損益、固定資産の貸付対価、無形資産の使用料・譲渡損益などがあります。
 ただし、これらの所得についても、常に部分合算の対象になるわけではありません。一定の適用除外や特則があるため、所得の発生原因や事業との関係を踏まえた個別判定が必要です。

 なお、部分合算には少額免除があります。「部分適用対象金額等の合計額」が、外国関係会社の所得の金額に相当する金額の5%以下、または2,000万円以下の場合には、部分合算課税は適用されません。

CFC税制の適用リスクが高い典型スキーム

 経済活動基準は実態で判断されるため、形式だけ基準を満たしているように見えても、実体が乏しい場合はCFC税制が適用されやすくなります。ここでは、税務上指摘されやすい代表的なスキームを3つ紹介します。

海外持株会社・地域統括会社スキーム

 日本法人が海外持株会社や地域統括会社を保有する場合、租税回避の意図がなくても、CFC税制上の検討が必要となることがあります。まずは、これらの海外子会社がペーパーカンパニーなどの特定外国関係会社に該当しないかを確認します。

 株式保有を主たる事業とする会社は、原則として事業基準を満たしませんが、実際に統括業務を行い、法令上の要件を満たす場合には、事業基準を満たすことがあります。また、一定の持株会社については、現地の管理支配会社と一体となって事業上必要な機能を担うなどの要件を満たせば、実体基準や管理支配基準を単独で満たさなくても、ペーパーカンパニーに該当しないことがあります。

 なお、ペーパーカンパニーに該当しない場合でも、租税負担割合が20%未満であれば、経済活動基準を別途確認する必要があります。海外持株会社では、統括会社に関する例外の適用可能性を含め、特に事業基準が重要です。また、経済活動基準を満たす場合でも、一定の受動的所得は部分合算の対象となることがあります。

出典:財務省ウェブサイト「外国子会社合算税制の概要」

知財管理会社(IP保有会社)スキーム

 日本国内で開発した知的財産(IP)を、税率の低い国の子会社に譲渡・移転し、その子会社が使用料(ロイヤリティ)を受け取るケースです。

 このロイヤリティは、自らの活動によらずに得られる受動的所得に当たるため、経済活動基準を満たしていても、租税負担割合が20%未満であれば部分合算の対象になり得ます。ロイヤリティという名目で低税率国に利益を移しても、結果として日本親会社の所得に合算されてしまう場合があるため、注意が必要です。

 なお、IP保有会社ではCFC税制だけでなく、移転価格税制の観点からも確認が必要です。特に、DEMPE機能(知的財産の開発・改良・維持・保護・使用)をどの会社が実際に担っているかにより、知的財産から生じる利益の帰属が問題となる場合があります。

「グループファイナンス会社」の典型事例

 海外子会社が、グループ内貸付、キャッシュプーリング、資金決済、為替管理などを担う「グループファイナンス会社(海外財務センター・キャッシュプール会社)」であるケースです。

 こうした会社が得る利息収入などは受動的所得に当たり、部分合算課税の対象となる場合があります。現地で実体ある財務機能を担い、経済活動基準を満たす場合でも、利子所得等について部分合算の要否を別途判定する必要があります。

 なお、一定の外国金融子会社等についての特則は、通常のグループ財務会社は対象となりません。

まとめ

 CFC税制(外国子会社合算税制)への対応は、事後ではなく事前の備えが重要です。海外子会社の事業実体を可視化・記録し、定期的に税務リスクを棚卸ししておくことが、想定外の合算課税を避ける鍵になります。

 実務上のポイントは、次の3点です。

  • 租税負担割合が27%未満の海外子会社は、特定外国関係会社に該当する可能性も含めて確認する
  • 経済活動基準を満たしているかは、形式ではなく、現地で実際に事業の管理・支配・運営が行われているかなどの実態により判断される
  • 受動的所得や投資性資産が多い会社、現地での人員・機能が乏しい会社は、早めに資料を整理しておく

 租税回避の意図がなくても、租税負担割合が低く、事業実体が不十分と判断されれば、CFC税制の対象となる可能性があります。

 また、CFC税制以外でも、移転価格税制や恒久的施設(PE)認定リスクとあわせて論点になるケースもあります。海外子会社を持つ企業は、現地法人の役割や取引実態、意思決定の所在、租税負担割合を定期的に確認し、日本法人の申告に影響がないかを早めに確認しておきましょう。

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