海外子会社への無利息貸付の課税関係

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海外子会社への無利息貸付の課税関係

 親会社が業績悪化した子会社に財政的支援を行うことは、しばしば検討課題になり、子会社への貸付けに係る利息を一時的に免除し、無利息貸付とすることもその一形態です。以下、海外子会社に無利息貸付を行った場合の課税関係を簡単に整理します。

目次

無利息貸付を行った場合の課税関係

 無利息貸付を行った貸し手である法人は、収受すべき利息の金額を益金として認識し(法法22②)、同時にその利息金額を借り手に贈与したものとして寄附金とされます(法法37①、⑦)。税務上の所得計算においては、借方に寄附金、貸方に受取利息を計上する仕訳が行われます。寄附金は損金算入限度額を超過する部分が損金不算入となり、借り手が海外子会社である場合には、国外関連者に対する寄附金として全額損金不算入となります(措法66の4③)。

 なお、グループ法人税制が平成22年税制改正で導入される以前は無利息貸付を受けた借り手には、法人税法上、課税関係は生じなかった(法法22②)のですが、同制度導入後は課税関係が生じることになるケースがあり得る点に注意が必要です。すなわち、無利息貸付を受けた借り手には、法人税基本通達4-2-6により支払利息相当額を損金に、受贈益相当額の益金に、それぞれ両建てで計上しますが、貸し手における当該経済的利益が法人税法第37条2項の寄附金(全額損金不算入)に該当するため、借り手の受贈益は同法第25条の2第1項により益金不算入となります。この結果、支払利息の損金算入のみが残り、借り手側には課税所得を減少させる効果が生じます。他方で、借り手が海外子会社であれば、無利息貸付を受けることについての課税関係は現地税法を確認する必要があります。

 貸し手である親会社と借り手である子会社がともに内国法人で、両者の間に完全支配関係がある場合には、グループ法人税制により、貸し手の寄附金は全額損金不算入とされ(法法37②)、借り手では、受贈益と支払利息を両建て経理することにより、受贈益は益金不算入、支払利息は損金算入となります(法法25の2①、法基通4-2-6)。さらに、親会社から子会社に移転した利益について、親会社において、子会社株式簿価を引き上げ(法令119の3⑨)、利益積立金額を増額する(法令9①七)寄附金修正を行うことになります。なお、海外子会社は外国法人であるためグループ法人税制の適用はありません。

清水惣事件にみる無利息貸付の判示

 子会社に対する無利息貸付について、常に上記の課税関係になるわけではありません。清水惣事件(注1)は子会社への無利息貸付について受取利息と寄附金が認定された事案ですが、無利息貸付にかかる収益認識および寄附金について以下のように判示しています。

「営利法人が金銭(元本)を無利息の約定で他に貸付けた場合には、借主からこれと対価的意義を有するものと認められる経済的利益の供与を受けているか、あるいは、他に当該営利法人がこれを受けることなく右果実相当額の利益を手離すことを首肯するに足りる何らかの合理的な経済目的その他の事情が存する場合でないかぎり、当該貸付がなされる場合にその当事者間で通常ありうるべき利率による金銭相当額の経済的利益が借主に移転したものとして顕在化したといいうるのであり、右利率による金銭相当額の経済的利益が無償で借主に提供されたものとしてこれが当該法人の収益として認識されることになるのである。」

「被控訴人が、東洋化成からこれと対価的意義を有するものと認められる経済的利益の供与を受けているか、あるいは、営利法人としてこれを受けることなく右利息相当額の利益を手離すことを首肯するに足る何らかの合理的な経済目的等のために東洋化成にこれを無償で供与したものであると認められないかぎり、寄附金として取扱われるべきものであり」

 上記の判旨から無利息貸付であっても、「対価的意義を有するものと認められる経済的利益の供与を受けている」か「果実相当額の利益を手離すことを首肯するに足りる何らかの合理的な経済目的その他の事情が存する場合」には受取利息の認識および寄附金認定はしなくてもよいように読めます。「対価的意義を有するものと認められる経済的利益の供与を受けている」場合とは、利息を受け取らなくても、他の形態、例えば商品の購入価額の値引きを受ける場合等が考えられます。一方、「合理的な経済目的その他の事情」が何を意味するかは、判決の中では明らかにされていません。

注1 大阪高判昭和53年3月30日(高民集31巻1号63頁)(下線は筆者)

整理・再建支援に関する通達

 法人税基本通達9-4-1および9-4-2は、寄附金に関する解釈通達であり、子会社等を整理・再建する場合における経済的利益の供与が、寄附金に該当しない場合の取り扱いを示したものです。通達の内容は以下の通りです。これらの通達が適用できる場面は、「合理的な経済目的その他の事情」がある場合であるとも考えられます。

9-4-1 (子会社等を整理する場合の損失負担等)
法人がその子会社等の解散、経営権の譲渡等に伴い当該子会社等のために債務の引受けその他の損失負担又は債権放棄等(以下9-4-1において「損失負担等」という。)をした場合において、その損失負担等をしなければ今後より大きな損失を蒙ることになることが社会通念上明らかであると認められるためやむを得ずその損失負担等をするに至った等そのことについて相当な理由があると認められるときは、その損失負担等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとする。
9-4-2 (子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)
法人がその子会社等に対して金銭の無償若しくは通常の利率よりも低い利率での貸付け又は債権放棄等(以下9-4-2において「無利息貸付け等」という。)をした場合において、その無利息貸付け等が例えば業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもので合理的な再建計画に基づくものである等その無利息貸付け等をしたことについて相当な理由があると認められるときは、その無利息貸付け等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとする。
 
(注) 合理的な再建計画かどうかについては、支援額の合理性、支援者による再建管理の有無、支援者の範囲の相当性及び支援割合の合理性等について、個々の事例に応じ、総合的に判断するのであるが、例えば、利害の対立する複数の支援者の合意により策定されたものと認められる再建計画は、原則として、合理的なものと取り扱う。

 これらの通達は昭和55年の法人税基本通達等の一部改正により創設され、独立企業原則を厳格に適用し、経済的利益の供与を形式的に寄附金として取り扱う税務の姿勢が、オイルショック後の数多くの企業救済を経験することにより、事実上改まってきているところであるので、基本的方針を明らかにしたものであると説明されています(注2)。

 子会社に対する無利息貸付について、基本通達9-4-2の適用がある場合には無利息貸付により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないことになりますが、「子会社が業績不振で倒産の危機にある」という子会社の状況と「合理的な再建計画に基づく」という支援の態様についての要件が示されています。もっとも、業績不振で倒産の危機とはどのような状況を指すのか、合理的な再建計画の内容について通達の文言からは必ずしも明確であるとは言えません。

    注2 四元俊明「法人税基本通達等の一部改正について」税経通信35巻11号10頁(1980)

国税庁質疑応答事例

 基本通達の文言だけでは必ずしも明確ではない点もあってか、国税庁は、「子会社等を整理・再建する場合の損失負担等」という項目で28の質疑応答事例(注3)、再建支援等事案に係る検討項目及びその概要(注4)というチェックリストを公表しています。

子会社等が経営危機に陥っている場合

 質疑応答事例4「経営危機に陥っていない子会社等に対する支援」において、子会社の状況について、「子会社等が経営危機に陥っている場合とは、一般的には、子会社等が債務超過の状態にあることなどから資金繰りが逼迫しているような場合が考えられます。なお、債務超過等の状態にあっても子会社等が自力で再建することが可能であると認められる場合には、その支援は経済合理性を有していないものと考えられます。」という記述があります。

合理的な整理計画または再建計画

 また、合理的な再建計画について、質疑応答事例1「合理的な整理計画又は再建計画とは」において、合理的な整理計画または再建計画であるかどうか判断するために、損失負担等を行うことは相当か、損失負担等の額(支援額)は合理的であるか、整理・再建管理はなされているか、損失負担等をする支援者の範囲は相当であるか、損失負担等の額の割合は合理的であるかの検討項目が挙げられています。

損失負担等を行う相当な理由

 さらに、質疑応答事例7「支援者にとって損失負担等を行う相当な理由」によると、支援者にとって損失負担等を行う相当な理由があるか否かは、「子会社等を再建することにより、残債権の弁済可能額が高まり、倒産した場合に比べ損失が軽減される場合若しくは支援者の信用が維持される場合」等に該当するかどうか検討することとされています。

 以上のように子会社への無利息貸付により経済的利益を供与することが寄附金とされない場合は、子会社が経営危機に陥っていることおよび再建計画が合理的であることが必要であり、かなり限定的であると解される可能性があります。

注3 国税庁ホームページ 「質疑応答事例 子会社等を整理・再建する場合の損失負担等」
注4 国税庁ホームページ 「再建支援等事案に係る検討項目及びその概要」

寄附金課税と移転価格課税

海外子会社に無利息貸付を行った場合、寄附金課税(法法22②、法法37①、措法66の4③)および移転価格課税(措法66の4①、④)の両方の課税要件を満たすことがあります。どちらで課税処分されても、増差所得金額には差はありませんが、事後的な相互協議の可否等で違いが生ずる可能性があります。

(注)金融取引に係る移転価格上の取扱いについては、OECDが2020年に公表した “Transfer Pricing Guidance on Financial Transactions” が OECD移転価格ガイドラインの Chapter X(金融取引) として組み込まれており、日本でも2022年6月改正の移転価格事務運営要領に反映されている。

おわりに

 海外子会社の運転資金を親会社からの借入金で調達する例はよく見られます。子会社の業績が悪化した場合には子会社を支援するために金利負担を少なくしたいという動機が働きますが、金利負担を免除し無利息または低利にすると、法人税基本通達9-4-2が適用できる場合を除いて寄附金課税や移転価格課税のリスクが伴います。

 子会社に貸付を行う場合に、貸付の通貨、貸付の時期、貸付の期間等によって金利水準が異なるため、これらの要素を考慮して金利を決定することが必要です。

 法人税基本通達9-4-2が適用されるのは、かなり限定的であるため、寄附金課税または移転価格課税のリスクを回避しつつ子会社の金利負担を解消する方法として、DESや疑似DESによる貸付金の資本への振替も選択肢となり得ます。

 東京共同グループの一員である東京共同会計事務所/株式会社東京共同ホールディングスには国際税務・外国税務に関する専門家が在籍し、海外での事業展開に伴う進出支援にも力を入れており、現地の会計事務所と連携した幅広い会計・税務のアドバイザリーサービスを提供しています。海外進出や国際取引においてお困りごとがある企業様はぜひお気軽にご相談ください。

 なお、本稿の内容は執筆者の個人的見解であり、当事務所の公式見解ではありません。記載内容の妥当性は法令等の改正により変化することがあります。
 本稿は具体的なアドバイスの提供を目的とするものではありません。個別事案の検討・推進に際しては、適切な専門家にご相談くださいますようお願い申し上げます。
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執筆者

  • 石塚 洋一

    東京共同会計事務所 シニアアドバイザー
    公認会計士
    税理士

    監査法人にて監査業務を経験後、税理士法人にて税務コンプライアンス、税務アドバイザリー業務に従事。特に国際税務の分野で、多国籍企業の税務ガバナンス、税務調査対応と税務争訟、移転価格における調査対応・相互協議、事前確認、国際取引についての税務アドバイス業務を専門とする。また、大学発スタートアップ企業等の監査役、会計専門職大学の租税法担当教員の経験を有する。

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